甘い小豆の汁の中に、お餅や団子が入った「ぜんざい」。この日本を代表する和スイーツが出雲発祥ってご存知でしたか?そのルーツを探るため、出雲の老舗和菓子屋である坂根屋さんのカフェで座談会を開きました。ぜんざいについての気になるあれこれ、全部聞いちゃいます!

左から

《教えてくれる人》

  • 渡部 稔さん(出雲ぜんざい学会会長)
  • 古島 尚さん(出雲ぜんざい学会)
  • 坂根 壮一郎さん(坂根屋ご主人)

《お話を聞く人》和スイーツ大好き女子

  • 丸尾 砂雪(まるお さゆき)さん(主婦/広島出身)
  • 大西 梨乃(おおにし りの)さん(大学生/千葉出身)

一同いただきます!

砂雪さん紅白のお団子が可愛いですね。小豆もほどよい甘みがあっておいしい!

会長こちらの店は大納言小豆という大粒でうま味のある小豆を使っているのが特徴だよね。 粒が押し潰されていないから、小豆のおいしさと食感がしっかりあるね。

梨乃さんぜんざい発祥の地って京都のイメージがあったけど、実は出雲なんですよね。

会長そうなんです。江戸時代に京都の清水寺執行の宗親が書き残した「祇園物語」には、 「出雲國に神在もちいと申事あり。京にてぜんざいもちいと申ハ。これを申あやまるにや。10月にハ日本國の諸神ミな出雲國にあつまり玉ふゆへに。神在と申なり。その祭に赤豆をにて汁をおほくし。すこし餅を入まいらせ節々まつり候を。神在もちい申よし。」(祇園物語より抜粋) と記されています。
ここでハッキリと「京にてぜんざいは誤り」と書かれているんですね。

梨乃さんへー!そんなに具体的に記述が残っているとは!

古島毎年旧暦の10月になると、出雲には全国の神々が縁結び会議のために集まられます。ぜんざいはその時に執り行われる「神在祭(かみありさい)」という神事で振る舞われていたと言われているんです。

砂雪さんそうそう、全国で神無月と呼ばれる旧暦の10月を、出雲地方では神在月(かみありづき)って呼ぶんですよね。

会長それで「神在餅(じんざいもち)」と呼ばれていたものが、出雲弁でなまって、「ずんざい」になり、「ぜんざい」になったと。

梨乃さんなまって出来た言葉だったんだ! ぜんざいが出雲発祥っていうのは聞いたことがあったけど、理由は初めて知りました。

砂雪さん出雲からどうやって全国に広まったんですかね?

会長出雲大社に参拝に来られる人は昔からたくさんいたので、出雲で食べた人が、各地で広めていったと考えるのが自然ですよね。

坂根出雲ぜんざいの特徴は、小豆に汁を多く入れて、餅を少し入れると祇園物語の中でも語られています。 うちは小豆にこだわっているので、この小豆の姿を見てもらうため、できるだけ澄んだ汁を多めに入れて、粒の大きさや小豆のおいしさを感じてもらえるように工夫しています。

古島付け合わせの塩昆布を合間に食べることで、ぜんざいのおいしさが増しますよね。

梨乃さんぜんざいといえば塩昆布なのかな?

砂雪さん私は実家が広島ですが、お店で食べた時やっぱりついていた気がします。 漬物のところもあったかな。

赤貝

会長出雲にはお茶の文化も根付いていて、お茶の時間を大切にします。 その時、甘いものだけじゃなく「しょけぐち(そけぐち)」といって、漬物や煮物といった塩辛いものも出す。そういう出雲の食文化の影響もあるかもしれないね。

梨乃さんこれは出雲産の小豆なんですか?

坂根そうです。斐川や平田の宍道湖西岸など、広い土地で米の代わりに大規模に小豆が作られています。 出雲大納言というブランドもあるので、これから産地として収穫量も増えていくと思います。

砂雪さん小豆って栄養あるんですか?

健人さん

坂根小豆にはポリフェノールの仲間であるアントシアニンやサポニンなどの成分による強い抗酸化作用があります。酸化するとシワやたるみといった老化の原因になりますが、抗酸化作用がある小豆は肌にいいと言えますね。 食物繊維も豊富で、オリゴ糖の三〜四糖類も入っています。これらは腸内細菌を活性化して腸内環境を整えると言われるので、美容にも効きそうですね。

砂雪さんえーすごい!それは食べないと!(笑)

坂根フェノール類やアミノ酸も豊富なので、それら豊富な栄養素が煮汁に逃げないように作るのがコツです。 小豆が割れないよう、沸騰直前のところで豆を炊くと、栄養が逃げずにおいしいぜんざいができますよ。

梨乃さんプロの技ですね!

坂根小豆には「邪気祓い、厄除け」などの力があると言われて、日本では昔からお祝いや季節の行事に食べられてきた縁起のいい食材ですしね。

会長正月には雑煮を食べるけど、この辺はぜんざいを食べる家も多いですね。

梨乃さんえ?お雑煮がぜんざい?

古島僕は出雲の出身ですが、実家のお雑煮は、すまし汁でいただく雑煮と、ぜんざいの2種類があります。

坂根雑煮ってその土地の文化が出ますからね。神在祭の神在餅の風習が残っているんではないでしょうか。

砂雪さん私の広島の実家は、鶏ガラをベースにした汁に、かまぼこやほうれん草、お餅が入っています。

梨乃さん千葉もそうですね。すまし汁にお餅と野菜が入っている感じです。

会長全国のお雑煮の多くはそういう感じだね。 この辺はすましの雑煮も餅と岩海苔しか入っていないシンプルなものが多いですね。

古島島根でも西部の方はもっと具だくさんだったり、黒豆が入ったり、島根県内だけで4種類くらいありますね。 出雲部はだいたいすましの雑煮とぜんざいの2種類。1日目はすましで2日目はぜんざいとか。

梨乃さんお雑煮が日によって違うのも面白いですね。 ぜんざいを家で作るという発想もあまりなかったです。さすが発祥の地!

砂雪さんこのぜんざいはお団子だけど、ぜんざいの由来は「神在餅」だし、ぜんざいは団子じゃなくて餅を入れるのが正しいのかな?

坂根団子はもち米を粉にして丸めたもの。餅はもち米を蒸してついたもの。原材料のところでは一緒だけど、ついた餅の方が工程的には簡単だから、昔の人は作りやすい餅の方が一般的だったかもしれませんね。

梨乃さんお餅は弾力があって、お団子はなめらか。どっちも甘いぜんざいに合っておいしいですね。

砂雪さんぜんざいとおしるこって違うんですか?

会長地域によっては、つぶあんはぜんざい、こしあんはおしること呼んだりしますね。

古島お餅も、関東は角餅、関西は丸餅と、餅の形が西と東で違うこともあります。

梨乃さんへー!

砂雪さんぜんざい学会はいつ発足されたんですか?

大五郎さん

会長2007年です。まちおこしの種を探しているときに、祇園物語などの歴史文献から出雲ぜんざいの歴史にたどりついたのを機に発足しました。

古島ちなみに10月31日はぜんざいの日なんですよ、1031=千と31、せんさい、ぜんざい!

梨乃さんなるほど!(笑)

健人さん

砂雪さんぜんざいは元々好きだったけど、美容に効くってイメージはなかった。 食物繊維も豊富だし、これからは意識して食べたいですね。

坂根食物の中でも、豆は食物繊維が一番多い食材。そして豆類の中でも、小豆がダントツで多いんです。小豆は脂質がない分、食物繊維とオリゴ糖がたくさんある。そういう意味では美容と健康に関して小豆はスーパーフードなんです。

古島洋菓子よりヘルシーなイメージだし、美容にも健康にもいいスイーツって言えますね。

坂根外国には豆を甘く煮るという食文化がないですね。主食だからというのもあると思いますが、甘く煮た小豆は日本独自の味わいでしょうね。

健人さん

砂雪さん動物性のものも一切入ってないですし、ビーガン(完全菜食主義者)の方にも勧められるスイーツかも。

会長そう、この出雲発祥の食文化を世界に発信することが我々の仕事。今後は小豆の栄養について本格的に研究しようか!

目標は高く、ジャパニーズスイーツぜんざいを世界に発信!
甘くておいしくて、美容と健康にもいいぜんざいを食べに、
世界中の女性が出雲にやって来る日も遠くないかもしれません。

醤油