甘くておいしいと評判の「多伎いちじく」は、生で食して良し加工しても良し、美容や健康にもいいと、多伎町が誇る人気の特産品です。そんなブランドフルーツである「多伎いちじく」は一体いつからどんな風に作られているのか?その秘密について、多伎町でいちじくの栽培や販売に携わる「いちじくのプロ」4名に、いちじくのことを語ってもらいました!

左から

《参加者》

  • 今岡 翔哉さん(JA職員 多伎いちじく担当)
  • 立脇 渉さん(JA多伎いちじく生産部会 部会長)
  • 野呂 昭さん(多伎いちじく生産農家)
  • 柳楽 広伸さん(道の駅キララ多伎運営会社「多伎振興」社員)

司会者多伎町でいちじくが栽培されるようになったのはいつ頃からですか?

立脇さん昔からこのあたりはどこの家にも庭先にいちじくがあったんですよ。その頃はいちじくの季節になると、魚の行商人が町に行く時に、魚と一緒にいちじくも売りに歩いてたんですね。当時はこの辺の地名である「小田」のいちじくと呼ばれていました。
そういう背景があったので、昭和50年代の減反政策の時に、稲作をやめていちじくを栽培しようとなったようです。 

今岡さん当時の多伎町がそれを推進したこともあって、特産品として定着したんですね。
昔はどこの家の庭先にもあったということは、多伎の気候や風土がいちじく栽培に適しているんでしょうね。

立脇さん海からの潮風に含まれるミネラルがおいしさの秘密とも言われてるね。

今岡さん県内のいちじく生産量の8割以上は多伎ですよね

立脇さん今はそうですね。中でも「多伎いちじく」は基本的に多伎町で栽培されたいちじくのみを言うようにしています。

司会者多伎で作られているいちじくは一種類ですか?

立脇さんそうです。「蓬莱柿(ほうらいし)」という種類のいちじくで、甘みの中にも爽やかな酸味のある上品な味わいが特徴です。お尻の部分が星型に割れるのも特徴の一つで、そこに水が入ると傷んでしまう。だから雨の日のいちじくは生食で出荷できないんです。

今岡さん雨の日のいちじくは姿煮やジャムなどの加工品になりますね。

柳楽さん蓬莱柿は食物繊維やカルシウムなどが豊富で栄養価が高いんです。キララ多伎で購入されるお客様は比較的女性の方が多いですね。島根で話題の美肌効果を求めて買われる方もおられますよ。
すごく美味しいけど日持ちがしにくいので栽培も流通も難しい、希少な品種なんですよね。

立脇さん日本で一般的に栽培されているのは「桝井ドーフィン」という種類。ドーフィンはあっさりした甘みで、ちょっと細長い感じで皮が厚めです。他には「キング」という緑色のイチジクもありますね。でも多伎町で生産されてるのは蓬莱柿のみです。

今岡さん桝井ドーフィンの主な産地は愛知ですね。野呂さんは愛知県からのIターンですよね?

野呂さんはい、愛知に35年ほど住んでいましたが2020年に出雲に移住しました。もともと田舎暮らしがしたいという思いがあって全国いろいろ探しましたが、最終的には妻の実家がある出雲に決めました。
愛知もいちじく畑がたくさんありましたね。でも私は普通の会社員だったので、その頃はいちじくとは全く縁がなかったです。

柳楽さんいちじく農家をしようと思ったきっかけは?

野呂さん普通はのんびり田舎暮らしを楽しみたいと思うものかもしれませんが、私は80歳くらいまで働ける何かがあったらいいなと思って探していました。
私の生まれは青森で、実家がリンゴと米の農家だったこともあってか、なんとなく果樹を栽培してみたいと思ってたんですね。そしたら、たまたまここがいちじくの産地だったので、じゃあ作ってみようとなりました。
ブドウや柿といった選択肢もあったんですが、いちじくは肥料と水さえ与えておけば簡単にできるよって言われて。でもやってみたらそれほど甘いものではなかったです(笑)

司会者いちじくの収穫期の様子を教えてください。

立脇さん多伎いちじくの旬は8〜10月です。その時期、私や野呂さんなどの農家では、毎朝夜明けとともに収穫して、JAの集荷所に持っていきます。

健人さん

今岡さん私はJAの多伎いちじくの担当なので、毎朝集荷所で農家さんから収穫されたいちじくを受け取ります。

柳楽さん私は毎朝、集荷所に行っていちじくを買い取り、キララ多伎でいちじくを販売しています。ですから基本的に生食のいちじくは、その日の朝に採れたものが並びます。

野呂さんいちじくは追熟をしないので、採ってからなるべく早い段階で食べてもらいたいですね。

柳楽さんそうですね。生食なら冷蔵庫保存で3日以内に食べていただきたいです。

立脇さん農家をはじめ、収穫期の関係者は本当に忙しい。年間の作業量の8割位はその時期の労力だね(笑)

今岡さんいやぁ本当に収穫期は毎日戦いですよ(笑)

司会者 いちじくは生食以外にどんな食べ方がありますか?

立脇さんこの辺りの人は昔から姿煮やジャムにしますね。保存食でずっと食べられるので。

今岡さんケーキに使ったり、生ハムに添えたり、食べ方の多様性はかなりありますね。

柳楽さんキララ多伎の商品だと、干しいちじくやシュークリーム、ゼリーやカステラなど、いちじくが入ったものだけで50種類以上ありますね。

今岡さんフランス料理のお店からの注文もありますよ。

司会者皆さんの好きな食べ方を教えてください。

健人さん

立脇さんやっぱり新鮮ないちじくを生で食べるのが一番美味しいですね。うちは四つに割って、そのまま崩さずにパンに乗せて食べたりします。

今岡さんバニラアイスクリームに生のいちじくをちょっと崩して混ぜると美味しいですよ!

野呂さん私は多伎に来て、初めて生の蓬莱柿を食べたんです。先輩農家さんに食べさせてもらったんですが、ちょっと熟しすぎて加工品に回すようないちじく。あれが甘くて美味しかったですね。

柳楽さん私も好きな食べ方で言えば生ですが、加工品もおいしいのはたくさんありますよ! キララ多伎ではJAのいちじくを使ったソフトクリームを販売していますし、冷凍したいちじくで作る自家製のシャーベットもすごくおいしくて人気です。
9月になるといちじくの限定スイーツなどが並ぶ「いちじくフェア」も開催しています。

今岡さん個人的なところだと皆さん生食推しでしたね(笑)日持ちの問題で遠方の方にはなかなかお届けするのが難しいですが、できるだけ多くの方に多伎いちじくを食べてもらいたいですね。

柳楽さん1日で届くところには生のいちじくも発送しますし、ネット販売もしています。 もちろん旬の時期にキララ多伎に来てもらえたら、毎日新鮮ないちじくを販売しています。宣伝でした(笑)

いちじくの話題で終始和気あいあいとした座談会でした。
皆さん大変と言いながらも、お話の中からいちじくへの愛がしっかり伝わってくるようです。一般にはなかなか出回ることのない「ちょっと熟し過ぎのいちじく」、
機会があればぜひ食してみたいですね!