2022年10月に開催された「全国和牛能力共進会」。5年に一度開かれ、“和牛のオリンピック”とも呼ばれるこの品評会、第12回となる今大会で「しまね和牛」が見事に肉質日本一に選ばれました! 脂肪の質、肉とのバランスともに高い評価を得たしまね和牛を育てる、出雲市の藤増牧場の皆さんに、大会の内容やしまね和牛についてお話を伺いました。

左から

《参加者》

  • 会長/藤江 昭雄さん
  • 統括場長/三登 達也さん
  • 社員/板垣 葵さん
  • 社員/中尾 亜梨沙さん

司会者まずは日本一、おめでとうございます! この「全国和牛能力共進会」ですが、一体どんな大会なんですか?

藤江会長全国の優秀な和牛を一堂に集めて、日本一の和牛を決める大会です。 肉質や口溶けの良さなど、牛肉としての質を評価する「肉牛の部」と、姿や形など牛そのものを評価する「種牛の部」に分かれていて、今回賞をいただいたのは「肉牛の部」の方です。

司会者全国からどのくらいの牛が集まるんですか?

三登さん今大会では全国から438頭集まり、島根県からは21頭が出場しました。そのうち「肉牛の部」では全国から166頭、うちの牧場からは6頭が出場しています。

司会者評価もいろいろな部門に分かれているんですね。

三登さんそうですね、今回は全9部門あって、その中でも花形とされる総合評価の「6区」のうち、肉質を審査する部門で1位を獲得しました。 分かりにくいかもしれませんが、「純粋にお肉のおいしさだけで見ると全国一ですよ」ということです(笑)

司会者なるほど〜! 肉牛の部はお肉の状態で審査されるんですか?

藤江会長そうですね。お肉の状態で、歩留(ぶど)まりとか脂肪の質、サシの状態など、肉質全体を見て厳正な審査が行われます。

司会者この和牛のオリンピック、過去全12回開催された中で、島根県は肉質で3回日本一になったんですよね?

全共(6区肉牛出品者集合)

三登さんそうですね、第5回、7回と、今回の12回。そのうち第5回と12回は会長が取ったんです。

司会者日本一3回のうち、2回が藤増さん!すごいですね!

藤江会長第5回の頃は「第7糸桜」という種雄牛(優れた遺伝子を持つ、選ばれた種牛)がいてね、それはもう素晴らしい、日本でトップの種雄牛だったんです。その子牛を買いに全国から人が来たくらい。島根が一番の産地だったんですよ。

司会者全国的に名高い和牛肉である「松阪牛」や「神戸牛」なども、ルーツは島根という話もよく聞きますが、本当ですか?

三登さん島根の子牛を買っても、育てる場所がブランド名になりますので、当然そういうこともありますね。

司会者今回、しまね和牛が全国で一番おいしいお肉と評価された訳ですが、しまね和牛の特徴ってどういうところですか?

藤江会長やっぱりやわらかくて旨味があって、脂もサラッとしていてね。 サシもきめ細かくて、このサシが牛肉を焼いた時に特有の甘い香りとなって、旨味がさらに引き立つんです。

三登さん牛も早熟早肥で、体格・体型に優れていますね。

司会者A5ランクとか、A4ランクはどうやって決まるんですか?オスメスは関係ありますか?

藤江会長オスメスは関係ありません。お肉の霜降りの状態を見て、日本食肉格付協会というところが決めています。

司会者食肉の格付協会なんてあるんですね〜! 藤増牧場さんはいつ創業されたんですか?

藤江会長創業は昭和51年ですね。私はもともと和牛を数頭肥育しながら農協で働いていましたが、退職して牛舎を建てて、本格的にはじめたわけです。 昭和53年にはスーパーを開業して、自社牧場産の牛肉を販売するようになって、今はスーパーが2店舗、飲食店が2店舗と事業を展開していきました。

司会者肥育から販売まで全てグループ内で完結できるというのが一番の特徴であり、強みですよね。 藤増さんには若い女性スタッフお二人おられるんですよね! どうしてこの仕事を選ばれたんですか?

板垣さん私たちは同じ高校の同級生なんですが、学校で牛のことを専門に学んだり、当番で牛のお世話をしたりするうちに興味が湧きました。2023年の4月からここで働いています。

司会者普段はどんな仕事をしているんですか?

中尾さん牛舎の中で、牛にエサをあげたり、床をきれいにしてあげたりといったお世話ですね。 出荷にも携わります。

司会者学生時代にやっていた時と比べて違いはありますか?

板垣さんやっぱりいい牛を育てたい!って気持ちになりますね。 牛を一頭一頭ちゃんと見ないといけないので、責任感が必要だなとすごく感じます。

司会者畜産業界ではまだ女性は少ないですか?

三登さん酪農の方は女性も結構多いですが、和牛はまだ全体的にも少ないと思いますね。 うちも牧場スタッフ全6名のうち、女性は彼女たち二人だけです。

健人さん

司会者女性ならではの視点もありますし、今後もっと増えていってほしいですね! 肥育の仕方については何かこだわりがありますか?

板垣さんそうですね、とにかく美味しいお肉を作ることが一番の目的なので、脂質を良くするために発酵肥料を使ったり、いろいろな工夫をしています。

三登さんあと昔から会長がクラシックを流してますね。

司会者牛舎にクラシックを流してるんですか?牛たちが聞いているんですね! やっぱり効果がありますかね?

藤江会長いや、ないんじゃないかな(笑)

中尾さんでも働いているスタッフも心地よく作業できている気がします(笑)

司会者藤増さんとしてのこだわりってどういうところですか?

藤江会長やはり地元が大切ですので、地域貢献を意識しています。 だから子牛も出雲で生まれ育った牛を中心に、島根生まれの、島根育ちの黒毛和種にこだわって買っています。

司会者最後に今後の目標をお願いします。

藤江会長今はとにかく、さらに美味しい肉を作っていけるよう、みんなで頑張って行くのが目標です。しまね和牛がもっと全国的に有名になるよう、市や県とも協力しながら、盛り上げていきたいと思っています!

藤増の皆さんのお話を聞いて、普段なにげなく食べているお肉は、こうした畜産業の方たちが、美味しいお肉を作るために日々頑張ってくださっているおかげなんだと強く感じました。 今回、日本一に選ばれたことをきっかけに、しまね和牛のおいしさをもっと全国の人たちに知ってもらえるよう、広めて行ってほしいと思います。

藤増の皆さん、たいへんありがとうございました。

醤油