300年の歴史を持つ大土地神楽は、出雲地方の独特な伝統を今に伝える舞踊です。神職から始まり、神楽方へと継承されたこの芸術は、特徴的な「まくら」を用いた衣装と独自のお囃子で知られています。昭和60年に島根県無形民俗文化財に指定され、地域を越えて広がるその魅力。本インタビューでは、その歴史、特色、そして未来への展望を探ります。過去と現在、伝統と革新が融合した大土地神楽をご紹介します。
左から
《参加者》
- 坂本伸仁さん/大土地神楽保存会神楽方会長
- 桐山和弘さん
- 板垣努さん
- 園山隆一さん
- 栗田和広さん
- 栗田優衣さん
- 大野莉久斗さん
- 大梶明美さん
司会者大土地神楽がどのようにしてはじまったのか教えてください。
坂本さん昔は神職さんによって舞われていたと言われています。300年くらい前の「祷家順番帳(とうやじゅんばんちょう)」によると大土地荒神社の氏子である6町内(上大土地、大土地、永徳寺坂、中村町、上中村、西立小路)が順番で神楽をするようになりました。「祷家順番帳(とうやじゅんばんちょう)」に舞った神楽の詳細などを記載していきました。昭和に入ってから神楽を専門にやる神楽方が誕生しました。300年以上途絶えることなく続いています。
桐山さん一般の人びとによる神楽は禁止されていた時期がありますけど、松江藩や出雲大社のお墨付きがあったため大土地神楽は禁止されませんでした。
司会者大土地神楽の特色について教えてください。
坂本さん能舞の要素が含まれており、腰に「まくら」を背負った上に衣装を着けるといった、特色のある容姿となっていて、出雲地方の神楽にはあまり見られない特徴がありますね。
桐山さんお囃子もたくさんありますね。
栗田さん13種類ありますね。
桐山さん鐘はないところも特色としてあげられると思います。
司会者石見神楽や、広島の神楽との違いというのは何かありますか。
坂本さんお囃子の速さが他の神楽とは違いゆっくりになりますね。
桐山さん1つの演目の中で3つも4つもお囃子が変わるっていうのも大土地神楽の特色になると思いますね。
坂本さんお囃子に乗せる歌があるところも他と違いますね。 出雲地方の神楽はだいたい佐陀神能の流れを汲んでいるとは言われていますが、大土地神楽は独特の神楽ですね。どちらが古い神楽かはまだ明らかになっていないようです。
桐山さん大社の古代出雲歴史博物館に展示してある衣装を調べると現存している神楽の衣装の中でも古いもののようです。
栗田さん出雲神楽のなかでも特色があるので自分たちもルーツは知りたいですね。
演目「荒神」 photo by 阿礼
司会者現在はどのような活動をされていますか?
坂本さん以前は毎年、出雲大社の例大祭でのみ演じていました。
昭和60年4月「島根県無形民俗文化財」に指定された頃から県外、海外でも演じるようになりました。
毎年の活動としては、5月の連休に出雲大社で演じています。 稲佐の浜の夕刻篝火舞(ゆうこくかがりびまい)、10月の例大祭などです。
桐山さん公演依頼があれば随時県外などにも行っています。
司会者神楽を継承していくということについて教えてください。
坂本さん今、神楽方は33名います。今現在は氏子だけでなく、近隣の市町村などからも神楽方への入会希望者がいますね。子供神楽をすることによって大土地神楽を見る人は多いですね。
栗田さん家が大土地神社の近くなので小さい頃から毎年見に来ていました。その関係で神楽をやるようになりました。
大野さん神楽が好きでどこにでも見に行きます。小さい頃から舞ってみたかったですけど、舞える場所がなかったです。大人になって会社の方のつてで大土地神楽に入りました。大土地神楽は、ここら辺にない神楽です。 他の神楽は「いいたて」(セリフ)が現代言葉になっているところが多くて神が人間に見えてしまいますが、大土地神楽は世界観が崩れてなくていいです。
優衣さん父が神楽方に入っていたので小さい頃から大土地神楽を見ていました。そのうち笛を吹きたくなって入りました。
司会者今後の活動、展望について教えてください。
園山さん今ある例大祭、連休の出雲大社での公演、稲佐の浜の夕刻篝火舞(ゆうこくかがりびまい)などを大事にしていきたいです。
稲佐の浜の夕刻篝火舞などは特にたくさんの人に観ていただけるのでどのように集客していくかを考えていきたいです。
桐山さんお声が掛かればなるべく出れるようにしていきたいですね。
坂本さんまだまだ大土地神楽を知ってもらわないといけませんね。それが後継につながるんだと思いますね。
園山さん今度の夕刻篝火舞でライブ配信をやってみてもいいかなと考えています。
演目「八乙女」