2022年10月に開催された「全国和牛能力共進会」。5年に一度開かれ、“和牛のオリンピック”とも呼ばれるこの品評会、第12回となる今大会で「しまね和牛」が見事に肉質日本一に選ばれました! 脂肪の質、肉とのバランスともに高い評価を得たしまね和牛を育てる、出雲市の藤増牧場の皆さんに、大会の内容やしまね和牛についてお話を伺いました。

左から

《参加者》

  • 常務取締役/吉岡 友加里さん(出雲市出身)
  • 入社6年目/勝部 美香さん(出雲市出身)

司会者吉岡製菓さん、昭和28年の創業当時はおせんべい屋さんだったんですね。

吉岡さんそうです。現社長の父が創業したお店で、当時は食べ物もあまりない時代でしたから、子どもたちに何かしたいなという思いでおせんべいを焼いたのが始まりと聞いています。 その後、昭和40年頃から和菓子の方に業容転換して、以来和菓子の製造販売を続けてきました。

司会者勝部さんは出雲市のご出身ですか?

勝部さんはい、お店のあたりが地元です。以前近くに「アイ」というショッピングセンターがあって、吉岡製菓はもともとその中にありました。小さい頃からそこで和菓子を買ってもらっていたので、私にとってはすごく馴染みのあるお店です。

司会者お二人は高校の同級生とか。

勝部さんそうなんです。たまたま私が仕事を探していた時に、吉岡さんと会う機会があって、それがきっかけでこちらで働くことになりました(笑)

司会者スタッフは何人おられるんですか?

吉岡さん基本は8人体制ですが、アルバイトやパートの方を含めて多い時で20人くらいですね。社長と専務以外はほとんど女性です。

司会者かなり女性率が高いんですね!女性が多いことで働きやすさは感じますか?

吉岡さんそうですね、やっぱり女性が多いほうが、女性特有の悩みなどを共感しやすいと思います。女性はホルモンバランス一つでも体調が変わりやすいので、そういう時に女性同士だといろいろと察し合えるところはありますよね。無理して頑張っているつもりでも周りの方が気づいてくれるというか。

勝部さん女性が多いからか、男性である社長や専務もそういったところには気を使ってくれていると感じます。私が妊娠していた時も、重いものを持たせないようにしたり、体調を気遣ってくれたりしていました。

司会者スタッフ同士が何でも気兼ねなく言える雰囲気がありそうですね。

勝部さん上下関係もあまりなく、結構何でも言えますね。私も含めて子育て中のスタッフも多いので、学校行事や子どもの急な体調不良などで仕事を休まないといけない時も、スタッフ同士で相談しあって、みんなが働きやすい環境ができていると思います。

司会者個人の事情に合わせた働き方ができるんですか?

吉岡さんパートやアルバイトの方が多いので、できるだけその人に合った働き方をしてもらっています。繁忙期などは、例えば小さいお子さんがいる方は日中だけとか、逆に夕方の方が都合がいいという方もおられるので、短時間勤務でも一人ひとりの事情に合わせてシフトを組むようにはしています。

司会者吉岡製菓といえば、「ルビーのいちごDAIFUKU」がとても有名ですよね。

吉岡さん2016年に発売して、おかげさまで好評をいただいております。
うちはもともと老舗の和菓子屋ということで、いわゆる昔ながらの和菓子がメインだったんですが、実は私、あんこが苦手だったんですよ。和菓子屋に嫁いだのに(笑)どちらかというと洋菓子が好きだったんですね。 それもあって、「もっとかわいいお菓子が作れたらいいな」と思って、専務と一緒に考えたのが「ルビーのいちご」です。

司会者かわいいお菓子が作りたい!という思いから作ったんですか?

吉岡さんいえ、実は開発に至ったあるきっかけがありました。
うちは小中学校の社会科見学の受け入れをしていて、毎年子どもたちがお店に見学に来てくれるんですね。来てくれた生徒さんにはおまんじゅうを食べてもらうんですが、ある時、食物アレルギーで食べられないお子さんがいたんです。

結局その子だけ違うものをお渡ししたんですが、その子はもちろん、周りの子にも先生にもすごく申し訳ない気持ちになって。わざわざ見学先に選んでくれて、お菓子作りを見学したのに、それが食べられないということに私たちがものすごく衝撃を受けたんですね。これじゃダメだと強く思って、アレルギー物質を使わないお菓子を作ろう!と。
それで、どうせなら見た目もかわいくてきれいなお菓子が作れないか模索したんです。

司会者「ルビーのいちご」には小麦粉を使っていないんですか?

吉岡さん小麦・卵・乳というアレルギーの原因となる代表的な原材料は使っていません。 それらのアレルギーを持つ方にも食べられるお菓子が作りたかったので。 商品開発にあたり、最初はまずグルテンフリーのお菓子を求めて県内外のお菓子屋を巡りました。でも小麦・卵・乳を使わずに、おいしく作るってすごく難しいんですよ。納得の行く味にたどり着くまで本当に大変で、構想に5年、試作に試作を重ねて完成しました。

司会者それまでありそうでなかった斬新な見た目も人気の理由だと思いますが、なにかヒントがあったんですか?

吉岡さんとにかくかわいくてきれいなものが作りたかったので、そういう物ってなんだろうって考えて宝石屋さんにも行きました。宝石ってもらうとうれしいものですしね。

司会者宝石屋さん!そういうところからもヒントを得て、ルビーのいちごができたんですね。

吉岡さん最初は私たちも白いいちご大福にしようと思ってたんですが、どうせ作るならどこにでもあるものじゃつまらないなって。せっかく和菓子屋の技術を持ってるんだから、その技術を使って誰にも真似できない大福を作ろうってなりました。

司会者それまでの和菓子とは違うものを作ると聞いて、社長さんの反応はどうでしたか?

吉岡さん食べられないお子さんがいた事に一番衝撃を受けたのは社長だったと思うんです。今まで和菓子職人として何十年と和菓子を作り続けてきて、買いに来てくれるお客さんがいて。それを「食べられない」って、しかも小さな子どもさんに言われたことは衝撃だったと思います。
なので社長も、「何とかしないといけないよね」って、全力で力を貸してくれました。私たちも分からないことだらけだったので、中のあんこをどうするかなどは社長に全面的に協力してもらいましたね。

司会者新しい商品の開発にあたっては、スタッフにも意見を聞かれるんですか?

吉岡さんそうですね、スタッフにはいろいろ意見を聞くようにしています。中でも勝部さんには一番聞きますね。仕入れるイチゴの品定めをしてもらったり、新しく作ったお菓子やパッケージを見せて、「かわいい」「かわいくない」「微妙」とか正直な感想を言ってもらったり(笑)

司会者従業員の立場としても、そうやって意見を取り入れてくれるのは嬉しいですよね。

勝部さんそうですね、やりがいや楽しさをすごく感じますね。

司会者お店のポスターやPOPも本当にかわいらしいものが多いですね。

吉岡さんあれは全部専務が手掛けています。多分一番女子力があるんじゃないかと。

勝部さん女子力高いですね。私たちより全然高いです(笑)

司会者そうなんですね!それは意外でした(笑)

勝部さんやっぱり女性のお客様が多いので、女性が喜んでくれることを一番に考えているように思います。スタッフも女性が多いので、女性が仕事していて楽しいようにとか、働きやすいようにとか、そういうのを一番気遣ってくれているのかなって。そこで働く女性が楽しいと思っていないと、商品の良さもお客さんに伝わらないですしね。

吉岡さんでもだからといって女性がメインというわけでもなく、やっぱりそこにも「共感」が必要だと思うんです。
こういう時代だから、女性を採用しました、女性ファーストでやってますって形だけ作っても、逆に男性から見たら差別だって思うかもしれないですよね。男性が女性活躍の意味を理解して共感してくれないと、そこには何の意味もないんじゃないかと思うんです。

司会者商品開発にあたって工夫していることなどはありますか?

吉岡さん例えばスイートポテトを作って、誰が作ったかは言わないで、スタッフにどれがいいかを聞くんです。誰が作ったって分かると、先入観があったり気を使ったりで本音が言えないので、忖度なしの正直な意見を聞くためにあえてそういう形で。 現場の意見は大事ですし、言いやすいようにしてあげるのも私たちの務めなので。

司会者話を聞いていて、お客様に喜んでほしい、従業員に気持ちよく働いてほしいという気持ちがすごく伝わってきますね。
勝部さんは一緒に働いていて、そういう経営者の思いを感じられますか?

勝部さんまずもって吉岡さんと専務がすごく頑張っているのを近くで見ているので、この人たちのやりたいことを一緒にやりたいな、この人たちが頑張ってるからこちらも頑張ろうって思えるんです。

司会者すごく素敵な関係が築けてるんですね。

勝部さん勝部さんをはじめ、スタッフみんな本当に頑張ってくれています。ルビーのいちごは専務と私が作り続けてきたものですが、今は勝部さんを中心にスタッフがそれぞれの役割をしっかりやってくれるので、私たちも安心して任せられています。例えばデパートの催事などで長期でお店を空けることになっても、私も専務も安心して出掛けられます。

司会者そういう体制づくりを社長は見守っておられる感じですか?

吉岡さんそうですね、やっぱり古い会社だと「社長の俺が決める!」みたいな人もいるかもしれないですけど、うちは真逆ですね。信じてもらえてると思うし、そこには自由さも責任も感じます。 やっぱり長年やっていると、固定概念に囚われたり自分を曲げられないというのも普通はあると思うんですが、うちの社長はそういうのないですね、私たち年下にもすごく気を使ってくれますし。

勝部さんやけどするなよ!気をつけろよ!ってすごい言われます(笑)

一同やさしい(笑)

取材時のスタッフの皆さんです。向かって中央は吉岡社長、右端は女子力満載の吉岡専務です。

長年、地元に愛され続けている吉岡製菓さん。昔ながらのお菓子も残しつつ、これまでになかった商品展開やPRの仕方で、県内外や若い世代の顧客もしっかり獲得している印象です。 しかしその裏には、妥協のない商品開発や、スタッフ同士の信頼関係、何より経営の舵取りを次の世代に任せている社長の懐の深さを感じました。

吉岡製菓の皆さま、ありがとうございました!