スピーディかつ正確なものづくりを!
生産性を上げるための「生産革新活動」
島根富士通 生産革新センター
【会社プロフィール】 株式会社 島根富士通 ノートパソコンやタブレットなどを国内で一貫製造を行う日本一の製造会社。ものづくり力を生かした「ものづくりサービス」の提供、「カスタマイズ&キッティング」「LCMサービス」「製造受託」の3つのサービスでニーズに対応。
専任「革新隊」の導入で
生産革新活動を徹底的に取り組む
佐藤センター長:2003年に製造の作業効率を良くするため「生産革新活動」を掲げ、2005年からコンサルタントを導入し本格的に行ってきました。その中で、やはりスキルが必要であったり、専任者を立てないと進まない状況もあり、製造部門の現場から1人選出し、6人の「革新隊」をつくることになりました。
革新隊は座学などの勉強を行うのと同時に、現場の改善活動を行っています。さらに3人1組でチームを組み、例えば「生産値を10%上げよう!」など、それぞれ目標値を立てて、それに向かい改善を進めています。
坂本さん:私は現在、革新隊のメンバーです。改善のポイントは、作業に対して“やりづらい”“やりにくい”ところを“やりやすく”することが1番!そうすることで、作業が楽になったり、時間が短縮できたりします。
例えば、モノを取る動作であれば、高いところのモノを取ったり、又は低くてしゃがむ動作を行うと、その間1~2秒のロスが生まれます。そのロスをなくすために、1番取りやすい高さにモノを配置し直し、作業効率を上げていくのです。
基本的には手の動き、そして作業の順番を入れ替えするなど作業順番を変えることで生産性をアップしています。また手作業だけではなく、歩いてモノを取りに行くエリアも短くするために部品の配置変更も行いました。しかし、自己満足では意味がないので、改善した後は必ず、現場のリーダーに「どうですか?」と伺いを立てます。効率が下がっている場合は元の作業に戻し、他の対策を考えています。細かい改善の積み重ねが、大きな効果となるのです。
佐藤センター長:パソコンは、メインボードから製品の組み立てまで行っています。特に製品の組み立ては人の作業となり、手の動きや足の動きが改善のポイント。部品を取りやすい場所に、言わば「ストライクゾーン」に極力モノを置くようにすれば、手を動かす距離が短くなるわけです。歩行も同じ。そこに注目して改善を行っています。
「仕組み」の改善を図り
人の手とICTと自動化を融合
佐藤センター長:もう1つ行ってきたのが「仕組みの改善」です。
例えば、1台のノートパソコンをレーンに流し、次にタブレットを流す…。ノートが連続して流れてくる場合もありますが、CPUのスピード、ハードディスクの容量など、1つ1つ仕様が違うので、それをスムーズに組み立てられるように改善を行ってきました。「ICT」を使ったり、自動化できるところは「自動化」する。そこが大きいと思います!
弊社は年間160万台のパソコンを製造し、9割が企業向けです。その9割の中を見ると10~20台のロットの注文が約8~9割。単純に言うと1台1台、違うものが流れてくる確率の方が多く、同じものを連続して組み立てるケースはほとんどありません。
部品のピッキングや組み立ては人が行っていますが、その裏で「ICT」を使い、間違いがないようなモノづくりができる仕組みをつくり上げています。
「自動化」は、例えばパソコン1台、ラインの先頭から組み立てが終わるまで600秒かかり、それを10人で製造すると、1人60秒の作業となります。そこで、1人が60秒間で仕事が終わったかどうかを見極めるための仕組みの導入も行っています。それが「定位置停止コンベアー」です。要は、1人60秒の仕事が終わらないとラインが止まるのです。つまり「ラインが止まる=仕事ができてない」とみなし、そこにどんな異常があるのかを調べ、集中して改善していきます。
「生産革新活動」は多方面の角度からの見直しが必要であることと、また作業者にとって仕事がやりやすい現場であることが1番です。
社員が日々改善意識をもつため
ポイント制の表彰制度も!
佐藤センター長:社内では改善活動のスキル制度があり、革新隊がスキル認定を受けます。改善スキルを承認されると、元の現場で周りを指導しながら改善活動を行うことができると認められ、革新隊の入れ替えを行います。しかし、革新隊のメンバーを総入れ替えしてしまうと、隊のスキルが下がってしまうので、先生役ということで現在は坂本が残り、あとのメンバーが入れ替わりしている状況です。
製造現場ではリーダーを立てていますが、リーダーはスキルがあり管理能力がある人材を選ぶほか、現場の改善を行えることも条件となります。そういう意味で、革新隊の任期は3年ですが、現場に戻った時に率先して改善を行い、メンバーを自ら引っ張り、リーダーとなって現場の活性も図ってほしいと思っています。
また「生産革新活動」は革新隊だけが日々考えるものではなく、社員全員を対象に、年に12回、改善提案報告を行っています。改善提案内容によってA・B・C評価にポイントを付け、半期に1度、ポイント分を図書券や商品券に替えています。中でも、A賞を多く取った人にはさらに、社長賞など表彰制度を取り入れ、活動を継続して行えるように社員全員で「改善」意識を常に持ち続ける取組みも行っています。
ノウハウと表彰実績を生かし
島根の中小企業も革新へ導く!
佐藤センター長:「生産革新活動」を約10年間続け、生産性が向上したことも評価され、昨年「第6回ものづくり日本大賞」経済産業大臣賞を受賞しました。この賞は、自治体の推薦からはじまり、中国経済産業局の視察や審査、さらに経済産業省の審査員が視察に来られます。総理大臣賞、経済産業大臣賞、特別賞、優秀賞など、さまざまな賞がある中、格式高い経済産業大臣賞をいただきました。
また昨年度は、我々の「生産革新活動」で培ってきたノウハウを生かすため、しまね産業振興財団のお声かけで、島根県内の中小企業へ実際に出向き指導をさせていただきました。出雲市内ではセミナーも開催し、地元の製造業の方々へ座学や取組みの説明も行いました。このように、長年コツコツと取り組んできた「生産革新活動」が、地域企業へ波及することは喜ばしいことだと実感しています。
富士通グループ内でも「生産革新活動」の資格認定制度があり、島根富士通はグループの中で1番スキル認定をされている人数が多いのです。 それは教育の仕組みがしっかりしていることと、「まじめな人が多い」という出雲人の気質も関係しているかもしれません。今後、県内の中小企業の生産性向上のために、ビジネス展開も視野に入れて取り組んでいく予定です。
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