出雲の大地で家族とともにつくる
滋味あふれる野菜を届けたい

ふくしま かつひろ

福島 克博

(SPIRA FARM)

出雲市出身。高校卒業後に進学のため上京し、都内で就職したが、サラリーマンを辞めて農業をすることを決断し、2020年に帰郷。畑では無化学肥料・無農薬栽培で多品目の野菜を栽培し、飲食店へ卸すほか、ネット販売や直売所、マルシェなどを通して安心安全で良質な野菜を提供している。

一度きりの人生、やりたいことをして生きたい!

農業を始めたのは3年前。実家が農家というわけでもなく、まさか自分が畑をやることになるなんてという感じです(笑)農家ではなかったですが、小さい頃から父の家庭菜園をよく手伝っていました。その影響なのか農業には興味があり、高校卒業後に進学した関東の大学では農学部を専攻。大学卒業後は青年海外協力隊に入り、「村落開発普及員」として2年ほどパプアニューギニアへ行きました。日本へ戻ってからは大学院に進み、卒業後は東京で就職して、転職しながら計3社ほど経験しました。

3社目の会社では、大手チェーンストアで販売する野菜のプライベートブランドを手掛けていました。全国の農家を訪ね、ブランド基準を満たしているか、商品として卸せるかなどを見て回る仕事です。その頃は結婚して子どももいたんですが、ふと、このまま退職するまでサラリーマンでいいのかなって疑問が湧いて。この先ずっとこういう形で仕事をしていくのって楽しくないな、自分の仕事に誇りを持って、子どもたちに「こういう仕事をしてるんだよ」って話せるような仕事がしたいと考えるようになりました。

その頃、大学の先輩が実家の農業を継いで就農していたんですが、すごく楽しそうだったんですよね。それを見て、僕も農業が好きなので、楽しくできるんじゃないかと思いつきました。一度きりの人生だし、やりたいことをして生きたいなと思って、農業を始めることを決めました。

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繋がりを作りながら成長できる農業を目指して

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会社を辞めて、千葉にある有機栽培をしている農家で2年間研修をして、栽培から販売まで本格的に学びました。農業って「これは自分が作ったものです」って言えるのがいいですよね。会社員時代は、物を横から横へ流すとか、誰かが作ったシステムを回すとか、そこに自分の創造性はなかったので。全部自分がやりました!って言えるものを商売にしたかったんです。

研修を終えて、2020年の4月に家族で島根に移住しました。島根にした理由は、やっぱり地元が良かったというところでしょうか。周囲のサポートもあるし、土地勘もありますし。

今栽培している野菜は、少なく見積もっても100種類以上。日本の野菜、海外の野菜、いろいろですね。取引している飲食店さんから作って欲しいと言われたものとか、新しく販売された種とか、決まりきった野菜だけでなく、四季を通じていろんな野菜を作っています。

の「SPIRA(スピラ)」はギリシャ語で螺旋という意味です。農業って栽培して収穫してという作業の繰り返しなんですが、同じところを回っているだけじゃなく、その過程でいろんな人と繋がりを持って上に登っていくイメージでつけました。

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子どもが安心して食べられる野菜を

僕の野菜は「化学肥料・化学合成農薬に頼らない野菜づくり」です。畑での栽培期間中は無農薬、無化学肥料で作っています。

農薬を完全否定するわけではありません。僕自身、小さい頃から農薬を使った野菜をたくさん食べてきましたし、父母世代なんかもっとたくさん農薬が使われていたかもしれない。でも、みんな元気なのでいいか悪いかなんて正直分からないですね。もちろん農薬というのは誤飲すると危ないものもあって、何千倍も薄めて使うんです。そして野菜によっては農薬が残ってしまうものもあります。スーパーのプライベートブランドを手掛けていた時は、そうした残留農薬検査もやっていました。

たくさんの野菜を安く供給できるように大量生産するにはやっぱり農薬が必要で、そこは否定できません。ただ、自分が生産するものは、子どもが安心して食べられる野菜を作りたいなって思ったんです。

大量生産の場合は虫がつくと一気に全部やられてしまうので農薬も必要ですが、うちの場合はいろんな種類を少しずつ作っているので、一気にやられることはないんです。例えばアブラムシとひと括りに言っても何百種類いて、虫によって好きな野菜が違うので、どれか一つに虫がついても野菜が全滅することはないわけです。そうして少しずつ作ることで害虫のリスク回避をしています。

それと化学肥料を使わないことで、ゆっくり成長する分、味が濃くておいしいという評価をいただいています。やはりお客さんにおいしいと言われるのは、この仕事で一番うれしいですね。

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お客さんと繋がれる「会える農家」でありたい

農家ってあんまりいいイメージを持ってない人が多くて、よく「大変だね」って言われるんですが、僕は楽しんで農業をやっているので、別に大変じゃないんですよ。だから、そのイメージを覆したいなとは思います。自然が相手なので、もちろん大変なこともあるけど、人間相手よりマシなくらい(笑)自然はもうしょうがないなって割り切れますしね。「自分が対応できなかったな」で終わるので、ストレスはないです。

今は飲食店さんや、ネットを中心にやり取りしていますが、「あの野菜をこんな料理にしました!」とか「これもう少しもらえますか」とか、そういったキャッチボールが直接できるのもいいですよね。年に1度はオープンデーを設けて収穫体験をして、そこでもお客さんと繋がれるし、野菜を収穫する子どもたちの楽しそうな姿も見られるし、“会える農家”でいたいなって(笑)そうしたイベントや、作り方、売り方を妻と考えて、「じゃあこうしよう!」ってすぐにできるのも楽しい。会社だと、まずは上司に通して、実行までにめちゃくちゃ時間かかるじゃないですか(笑)誰かにやれって言われたことをやるんじゃなくて、自分のやりたいことや考え方がダイレクトに反映できる。そういう経営をしている農家は珍しいかもしれないけど、家族でいろんなことを一緒に考えながら野菜を作る日々を、すごく楽しんでいます。

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出雲人が薦める出雲

板倉酒造 天穏
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出雲の銘酒「天穏」は野菜料理にも合わせやすく、食中酒にオススメ!農園名の「スピラ」は、この天穏を醸す板倉酒造の小島杜氏との会話から生まれた言葉です。酒造りで出る米ぬかは、ぼかし肥料に使用させてもらっています。

そば処 田中屋
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出雲大社の勢溜(せいだまり)前にある人気のお蕎麦屋さん。子どもたちも大好きなメニューの「天ぷら蕎麦」には、SPIRA FARMの季節の野菜を使ってもらっています。また、蕎麦の出汁ガラは肥料として畑に戻しています。

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