一畑電車で働く前は松江市内のパン屋で製造と接客をしていました。パン屋はもともと大学生の時のバイト先で、人見知りの私に接客の楽しさを教えてもらった場所でもあります。その後、パン屋が閉店してしまい就職先を探していたところ、一畑電車で電車内の観光案内を行うアテンダントの募集がありました。地元の出雲で就職できることと、お客様と接する時間が長く取れること、そして何より亡くなった父が鉄道ファンだったため、縁を感じ応募することにしました。

入社当初は車内で観光案内を行うアテンダントとして地元の良さを発信していました。仕事も慣れてきた頃に、ふと父が「電車の運転士になりたかったな…」とずっと話していたことを思い出し、その時はじめて〝運転士をやってみたい！〟と思いました。すでに一畑電車では女性の運転士がいたこともあり、女性でも運転士になれる土台がありました。そして、とても不思議なのですが、会社に「運転士になりたいです！」と申し出た時、ちょうど社内で運転士募集の発表があった日だったのです。会社に希望を受け入れていただき、駅務を１年行った後、電車の運転士を養成する千葉県の京成電鉄へ行きました。

休日は映画を見たり、喫茶店に行ってのんびり読書をしています。映画はＳＦやアクションものを。本は本屋に行っては新書を見たり、帯に書いてある言葉を読んで気に入ったものを買ったり、あと怪奇小説も好きです。

至福の時間は、テイクアウトの珈琲を買って、海を眺めながらボ～っと本を読むことです。小さいころから近くに海がある生活だったので海が好きで、ずっと眺めていられますし心落ち着く場所になっています。

プライベートすぎますが…今年結婚しました！同じ会社の人です。お互い仕事を続けるので、仕事も家事も助け合いながら暮らしていきたいと思っています。鉄道会社は男の職場で、運転士の女性は私が２人目。これから起こり得る産休や育休をとるケースは私がはじめて。運転士の女性が働きやすい職場をつくるモデルケースになればいいと思っています。

運転士になり２年経ちました。いつものクセで、車の運転をしているときも信号が青に変わると信号を指さして「進行～」と思わず言ってしまったことがあります（笑）。職業病になるほど、少しずつ運転士が身に付いてきたのだと良い方に捉えています！

これは運転士の特権なのですが、運転席から見える風景は最高です！一畑電車の沿線はもちろん車両からの眺めも良いのですが、私のお気に入りは松江から伊野灘駅に入るところです。カーブの手前で宍道湖が小さく見え始め、視界が次第に広がっていきます。山も湖もまちも見えてきて、だんだん景色が見えてくる様子はとっても綺麗です。他には、景色がいい秋鹿町駅や夕日が見えやすい伊野灘駅、大社線なら粟津稲生神社の鳥居はいいですよね。宍道湖湖北線は宍道湖や北山山系の山々の自然の中に素朴な一畑電車が通る景色が、心落ち着きます。

それと一畑電車ならではだと思いますが、子どもたちが「運転士さんだ！」と声をかけてくれたり、電車から降りるときにハイタッチしてくれ、とても嬉しいです。一畑電車はワンマン運転なので車掌業務も接客も運転士が行っています。お客様のご案内や駅の乗り降りの手伝いも行うため、お客様と接する機会が多く「ありがとう」と言われることもあり〝一畑電車に入って良かった〟と思える瞬間でもあります。

このように、いつも良くしていただいている沿線の利用者の皆様やお客様のために日々、車両の状態を確かめながら運転をしています。時には、時間が遅れてしまい、早く走らせてしまい、乗り心地を削らないといけない場合があります…。そうならないよう、先輩運転士をお手本にお客様のために快適さとやさしい運転ができるよう、これからも精進していきたいです。