eスポーツを島根の文化に!
無限の可能性を秘めた新しいコンテンツ
かげやま あきひろ
影山晃広
(一般社団法人島根県eスポーツ連合代表理事、Cafe SaKURA代表、浜ロック実行委員長)
大社町出身。地元の高校を卒業後に単身イギリスへ渡り、帰国後Cafe SaKURAをオープン。オーナーとしてカフェを経営する傍ら、音楽イベント「浜ロック」の実行委員長や「夢フェスタinいずも」のステージ責任者なども務める。2019年からはeスポーツに着目し、出雲市を拠点に積極的な活動を展開している。
音楽イベントからeスポーツまで
発想のベースにある「人を楽しませたい」という思い
大社町で生まれ育ち、高校卒業後に1年半ほどイギリスで暮らしました。日本に帰ってからは起業しようと思い立ち、26歳の時にCafe SaKURAをオープンしたんです。
オーナーとしてカフェを経営しながら、プライベートではよく友達10人くらいで海でバーベキューをしていました。そうしたら友達が友達を呼んで、3年目には200人くらいになっちゃって(笑)みんなが楽しそうだったから、個人的に花火師さんに依頼して、打ち上げ花火をしたんですよ。そしたらみんなすごく喜んでくれて。そういうサプライズが大好きでした。
僕は高校時代からバンドをやっていて、イギリスでも帰国後もずっと音楽を続けていたこともあり、その浜辺でのバーベキューに音楽を合わせたイベントをやろう!って思いついたんです。それが2012年から始まった「浜ロック」です。いろんなバンドを招いて、来場者にはバーベキューをしながら音楽を楽しんでもらえるイベントにして。ここ2年ほどはコロナ禍で開催できなかったですが、毎年たくさんの人が来てくれて盛り上がっていました。
浜ロックの実行委員長をしていたこともあり、2019年10月に開かれた出雲市商店街のイベント「夢フェスタinいずも」ではステージ責任者を任されました。そこで「今までにない何か新しいコンテンツはないだろうか」と思案していた時に思いついたのが、eスポーツでした。
場所も天候も関係なし
バリアフリーで楽しめるスポーツ
eスポーツというのは「エレクトロニック・スポーツ」の略で、簡単に言えばゲームを使った対戦です。日本では、スポーツ=体を動かすものという教育的な要素を持った概念がありますが、海外において「スポーツ」は、もっと広い意味で「楽しむもの」「気晴らし」という感覚なんです。基本的には対戦できるものであればOK。つまりチェスやオセロもスポーツなんです。ゲームで言えば今流行りのフォートナイト(オンラインゲーム)もそうですね。何回か大会をやりましたが大盛況でした。
eスポーツにはさまざまなメリットがあって、オンラインでもできるので自宅からでも参加できますし、天候や場所に左右されません。介護施設に持っていって、おじいちゃんおばあちゃんに車のゲームなんかをしてもらうと、めちゃくちゃ盛り上がるんです(笑)例えば離れて暮らすお孫さんと囲碁や将棋がしたいけど、施設にいたらできないですよね。でもゲームならオンラインで対戦することができるんです。フレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)予防の観点からも注目されていて、島根大学と協力して、バイタルサインのデータ化を試みています。
特別支援学校に訪問したことがありますが、ここでもとても喜んでもらえました。叩くだけで操作ができるコントローラーを用意すれば、コントローラーを持てない子もゲームができる。そんなふうにeスポーツなら、身体的ハンデや環境的ハンデの垣根なく、同じフィールドで楽しむことが可能なんです。
成長していくコンテンツを島根の新しい文化に
ここ数年はコロナ禍による巣ごもり需要もあって、eスポーツの経済効果は右肩上がり、経済産業省も本格的な成長支援に乗り出しています。バーチャルやVRもどんどん進化していきますし、デジタル庁も発足して、オンラインゲームはこれからまだまだ伸びていくと思います。
そんな中で僕らが今目標に掲げるのは「eスポーツを島根の文化にしていきたい」ということです。文化って何かを考えた時、小さい頃から自分たちが触れてきたものだったり、常にそばにあったものですよね。僕らの世代は生まれた時からゲームがあって、きっとこの先もなくなることはない。じゃあそれを文化にしようって思ったんです。eスポーツなら場所や環境的な問題もないので、島根にいても全国や世界を相手にして戦うことができますしね。
人口減少対策でUIターンに力を入れるのも大事だけど、出てしまったものを戻すことを考えるだけでなく、そもそも出ていかないようにするべきだと思うんです。出ていかなくても都会と同じ土俵で戦えるものが用意されていれば減らないと思うし、外からも来てもらえるようになる。島根には有名なプログラミング言語「Ruby」があるし、ITが充実している土壌だよと言えるようにしていきたいですね。
「リスクがあるから排除」ではなく、メリットにも目を向けて
残念ながらゲームにはマイナスイメージもつきまといます。ゲームをする子の中には引きこもっている子や、対面で話をするのが苦手な子が多いのも事実です。でも「だからダメ」ではなく、どうやって共存していくのかが大切だと思うんです。子どもたちも、僕たち親世代も、ゲーム=悪ではなく、eスポーツとかメリットの方に目を向けて認識を変えていけば、ゲームに対してもっと高いモラルで付き合えるのではないかと。
例えば、病院から出られないような方でもゲームはできる。学校には行けなくても、ゲームの世界で生きがいを見つけられている子もいる。そういう人たちにとってはゲームは救いなわけです。悪影響ばかりを考えて奪い取るのではなく、共存して、デメリットをメリットに変えていく必要があるように思う。そういう観点からも我々は、ゲーム依存のセミナーとか、そういったマイナス要素への対策も手掛けています。
お子さんのゲーム依存に悩む方からの相談もよく受けますが、僕が思うのは、あれはいいこれはダメという判断は、ある程度その子に任せるべきということ。子どもの人生ですから。今の時代、親が子どもの道を決めて、子どもの失敗の尻拭いも親がするようなケースも多いです。でも子どもが自分で道を決めて、失敗も自分で責任を取る。そういう習慣をつけるのも大切だと思います。
勉強や運動ができることは褒められて、ゲームが上手なことは褒められないのはおかしい。運動が得意な子は運動を頑張ればいい。ゲームでヒーローになれる子はゲームを頑張ればいい。ゲームが好きな子はプログラミングが得意かもしれない。そうしてITができる人材を育成することができれば、今の時代テレワークという働き方もあるし、若者の流出も防げるかもしれない。視点を変えれば、そんな可能性も広がるわけです。
自分が勝負できるフィールドを自分で見つけてやっていくことが大事ですよね。子ども達のことももっと広い心で受け止めて、いろんなことにチャレンジさせてあげてほしいです。子どもの能力ってすごいんですよ。うちの息子を見ていても、本当にいろんな事に気づかせてもらえて学ぶことが多い。息子は僕の先生なんですよ(笑)
出雲人が薦める出雲
- 奉納山の頂上からの景色
家の近くから登れたので、小さい頃からよく登って頂上からの景色を見ていました。大社の町並みや稲佐の浜が一望できて、晴れた日には三瓶山も見えます。夜はイカ釣り漁船の明かりが見えてすごくキレイです。
- 小田川かまぼこ店ののやき
高校生の頃、毎年年末になるとアルバイトに行ってました。休憩の時にいつもお茶とかまぼこが出てくるんですが、かまぼこがすごくおいしくて。中でものやきが大好きでした。思い出の味ですね。