「切り絵」という表現方法で
自分の想いを伝える

カジタミキ

出雲市出身。子どもの頃から絵を描くことが好きで、ものづくりに没頭する日々。中学1年生の時にデザインナイフを知り、ナイフを使った制作にもハマっていく。2008年に骨董店で着物の型紙と出会い、それから独学で切り絵をはじめる。2013年、切り絵作家として本格的に活動を開始。毎年グループ展や個展を行う。2016年4月にはニューヨークでグループ展の参加、そして個展も開催する。

好きなことをやっていたい
それが「切り絵」だった。

子どものころから絵を描いたり、ものづくりに没頭したり、空想したりするのが好きで、ベースはずっと変わっていません。切り絵をするきっかけになったのは、骨董屋で着物の型紙に出会ったからです。小紋などの柄を着物に染めるために用いられた染め型紙で、細かいモチーフが彫られている柿渋で染めた和紙です。その模様が緻密でとても綺麗なんです! むかしから日本人は日常的に着物や身の回りにこのような綺麗な柄を取り入れていたかと思うと、日本の美意識に感動して、いろいろな人に知ってもらいたいと思うようになりました。同時に「紙が違う色だったらもっと綺麗なのに…」と思い、それをパソコンに取り込み、彩りある紙にコピーをして切りはじめました。それが今から約8年前のことです。好きでコツコツ模様を切っていたので、知人に「これは切り絵だよ」と言われるまで、自分が切り絵をしていたことに気づきませんでした(笑)。それから3年後、作品が増え、皆さんに見てもらいと思い、初の個展を開催しました。その時に、はじめてオリジナルの「蝶」をモチーフとした作品を制作しました。蝶は興味深い生きもので、「長寿というおめでたい意味もあれば、「死」の象徴などと、間逆の意味もあります。「バタフライエフェクト」とは、一見関係のないような小さな出来事が、いずれ世界の大きな出来事に変わるということなのですが、私の場合、蝶の小さな羽ばたきがやがて世界に影響を及ぼす可能性があるとしたら、私の作品もそのように飛び立って欲しいという意味が込められています。人間の可能性、生きものの可能性、未知のさまざまな広がり、そんな思いを蝶のモチーフにこめています。

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感じたコトを表現する
切り絵に込められた想い

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本格的に作家活動をはじめたのは2013年からです。ちょうどその頃に、大山ものづくり学校で活動をしている「山陰saccaの企画で、スライドショーの原画を切り絵でつくりました。このストーリー仕立ての原画制作がきっかけで「描きたいことを素直に表現したらいいかも!」と思うようになり、その時に自分の中で感じたものや気持ちをストレートに出す絵を描くようになりました。とても抽象的な絵ですけど(笑)。制作は毎日コツコツと。自分の想いを白い紙に描いて、それをパソコンで切り絵用の紙にコピーし、色を付けてから切りはじめます。小さいものなら4日間くらいで完成。モチーフに円形が多いのですが、自分の気持ちや言葉にする感覚が円の中に表現しやすいからです。細かな模様は、着物の型紙の影響を受けていると思います。そして絵を描く時も切る時も、自分が表現したかった「想いについて考えながら制作しています。線の切り方1つで意味合いが違ってくるんですよ。例えば…角はエッジを鋭く切りたいんです!きっちりと。その形にしっかり切れているかどうかは、言葉をちゃんと発音して、しっかり相手に伝えられているか…に似ているのです。

出雲を制作の拠点にしながら
ニューヨークでグループ展、個展を開催!

最近は、立体的な作品も制作していて、桂由美さんのブライダルハウス本店50周年記念のショーウィンドウディスプレイをお手伝いさせていただいたり、『ユミカツラパリクチュールコレクション~GLORIOUS RIMPA~』では、帽子やアクセサリーなどの装飾を手掛けました。今は、今年4月にニューヨークで開催されるグループ展に向けて作品をつくっています。イメージとしては幼い少女が、おとぎ話のお姫さまに憧れるような…そう、「シンデレラ」のようなドレスや靴、アクセサリーを切り絵で制作中です。完成したら、モデルさんに着ていただき、撮影し、写真にしたものが作品となります。個展や展示会は地元からはじまり、大阪や県外などでも開催しています。私の作品を見ていただいた方からお声がかかり、縁も広がってきました。今回のニューヨークの展示会や個展も楽しみで、海外での仕事はとても魅力を感じます。でも、やっぱりこのアトリエにいるときが一番安らぎますね(笑)。空を見たり、散歩がてら海をみに行ったり、猫がいつも周りにいて、家族のいるところが私の居場所です。

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ヒトと切り絵の融合
前代未聞の夢の実現へ

私には夢があります。実は、ずっと以前に見た「夢」の話ですが、ボリビアのウユニ塩湖― そこは雨季に降った雨が流れることなく大地に薄い水の膜を張ることで、空を湖面に映し出す「天空の鏡」と呼ばれているところですが、その湖に人間ではない生きものが美しい音楽を奏でながらパレードしていたのです。それがあまりにも怖く、それでいてとても綺麗で…私はずっと魅了されているのですが、見つかったら殺されるんじゃないかと思うくらい恐怖も感じているのです。その夢から覚めて我に返ると、号泣していました。なぜか…。それが忘れられなくて、いつかあの夢を再現したいと思っています。これまで切り絵に没頭しすぎて、その「夢」忘れていましたが、私の原点はその「音楽パレードの夢を表現したい」ことだったと、最近思いを戻し、その夢に向かっていこうという気持ちになりました。それが、装飾を本格的に手掛けている理由です。シンデレラをイメージした衣装や装飾もその一つ。夢では「人は登場していないのですが、作品では人間を土台にしながら、切り絵装飾を重ねることで別の生きものをつくりだす。ん~人間と別の生きものの融合…ある意味共存ですかね。別々の世界のものを合わせることで1つの作品にする、お互いがお互いをじゃましない。そういう作品をつくり、いつかウユニ塩湖で切り絵の装飾を着飾った音楽パレードを実現させたいです。

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出雲人が薦める出雲

出雲の空
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出雲の空はたくさん色があります。紫、緑、ピンク…ない色はないですね。自分の作品も出雲の空をイメージしていることが多く、アトリエもではいつも空を眺められるような場所に座っています。

荒神谷遺跡の古代ハス
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荒神谷遺跡の古代ハスです。ぼてっとした大きい花を見るのがはじめてで、感動しました。ハスが1つポツンと咲いているのも素敵ですし、たくさん咲いている姿も圧巻。花が開く前の早朝から行くと、とてもいい香りがします。

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