スパイスをもっと身近に日常的に自由で楽しいカレーづくりの提案
かんだ あつこ
神田 篤子
(U-spice)
出雲市出身。毎週水曜日の午後1時半から4時まで、自宅のリビングでスパイスを販売する。(土曜日も不定期で営業)。リビングのカウンターには色とりどりのスパイスが60〜70種類ほど並び、スーパーなど一般の店頭では手に入りにくいスパイスも多数取り揃えている。第1・3・4金曜日限定で、市内で店舗営業も行っている。カレーの学校16期生。
ご主人の趣味からはじまったスパイスカレーづくり
「U-spice」は私が一人でやっているように思われることも多いですが、実はこれをはじめたきっかけは主人なんです。私は生まれも育ちも出雲市で、高校卒業後は地元の短大の家政科に進学しました。当時は家庭科の先生を目指していたのですが、先生から栄養士を勧められたこともあって栄養士の資格を取って卒業しました。でも栄養士の仕事は自分の考えに沿わないところもあったので栄養士関連の仕事には就かず、水質分析の仕事にはじまり、パン屋さん、ホテルや病院の厨房、カフェなどを転々としながら、さまざまな仕事の経験を積みました。
その間に主人と出会って、23歳の時に結婚。私も主人もカフェ巡りが好きだったので、2人でいろいろなお店をまわってたんですね。ある時、お店でスパイスカレーを食べた主人が「これ自分でも作れるかも!」と言って、独学でいろいろ調べながらスパイスを使ったカレーを作るようになったんです。それが今に至る最初のきっかけでした。
コロナ禍の不安の中で思い立ったスパイス販売の発想
10年ほど前になりますが、夫婦で何かカフェごっこみたいなことがしたくて、市内にある古民家塾を会場に「うたたね」というイベントをはじめたんです。パン屋さんとか、雑貨屋さんとか、今では市内にお店を持って活躍しておられるような方々ばかりですが、当時声をかけて集まってもらって。雑貨あり、写真あり、カフェありの会場の中で、うちはお昼ごはんを出そう!ということで、カレーやいろんなお食事を提供していたんですね。そういったイベントを月に1度のペースで開いていました。
2020年に新型コロナウイルスが流行して、当時私は大社町のカフェで働いてたんですが、お客さんも少なくなって1カ月休業することになったんです。お休みの間、「今よりもっと酷いことが起きたら、本当に職を失ってしまうかも」と不安を感じました。そんな時に、ネット上でパン教室の動画の販売を見たんです。一般の方がパンの作り方を動画にして販売されていて、それが結構売れていたんですね。コロナによって働き方や発信の仕方が変わっていく中で、こういう商売の方法があるのかと興味が湧きました。「じゃあカレーを作っている動画を販売したら?」って周りから言われたんですが、それはやっぱりプロじゃないから・・・と引け目を感じてしまって(笑)以前から、「スパイスはどうやって手に入れているんですか?」と聞かれる事があったので、じゃあスパイスを販売してみようか!と思い立ちました。私たちはネットで買うことが多かったですが、1キロ以上の単位で売られていることが多く、カレーを一回作るのにそんなに量もいらないので、それを小分けにして売ってみたらどうかと考えたんです。
実は日本発祥!スパイスカレーの魅力
カフェのお休みが水曜日だったので、水曜日に自宅で販売することにしました。スパイスの使い方がよく分からないという方向けには、簡単に作れるようスパイスカレーのキットも作りました。それと同時に、キットのレシピでは伝わらないところもあるから、教室をやってほしいという声があったので、水曜日の営業前にはスパイスカレーの作り方教室を開くことにしました。私や主人が作るところを見てもらって、調理法やスパイスを使うコツみたいなものを学んでもらう形です。メニューは毎回変えていて、さまざまなカレーを作っています。参加される方のご希望で決めることもありますよ。動物性のものを全く使わないカレーとか、すごくマニアックなカレーとか(笑)作ったあと、全員でカレーを食べながら談笑するのも楽しいひとときです。
スパイスカレー=本場インド風のカレーって思う方もいらっしゃいますが、実はスパイスカレーは日本向けにアレンジしたカレーで、「スパイスカレー」という名前をつけたのも日本の方です。インドのいろんな地方のカレーのいいとこ取りをしたような料理なので、どこの国にも属さないカレーなんですね。
よく家庭で作られるようなルーを使ったカレーは、小麦粉を使ってとろみを出していますが、スパイスカレーは小麦粉を全く使いません。ルーカレーはイギリスから伝わったものと言われていますが、もう日本の食文化みたいになっていますよね。スパイスカレーの魅力は、毎回同じ味にはならないところかな。いろんなスパイスを足したり引いたりするだけで味が変わる。そういう実験的な楽しさもありますね。
スパイスカレーは自由で楽しくをモットーに
毎月、第1・3・4金曜日に市内のお店を間借りする形で店舗営業も始めました。本格的にカレーのお店を出しませんかってよく言われますが、それは多分この先もなくて、メインはあくまでもスパイスです。カフェで働いていた経験を生かしてお店を出すとか、栄養士の資格を生かして栄養面からカレーを考えるとか、そういうこだわりは全然ないんです。お店にしたら、お客さんに受けるカレーがメインになっちゃいますよね。それをすると、受けないカレーに挑戦できなくなってしまう。栄養士としてレシピを考えたら、優等生みたいなカレーしか作れなくなってしまう。そうじゃなくて、もっと自由で楽しいものであってほしいと思っていて。例えば親子を対象にしたカレー教室とかも開くんですが、ちゃんと野菜を切るとか、きれいに盛り付けることを良しとするのではなく、ぐちゃぐちゃでも何でも好きにしてOKにしています。まずはカレーやお料理を好きになってもらいたいので。栄養士らしいことといったら、四季折々の食材を具材に使うようにしているくらいかな(笑)
最初の頃は主人は本業をしながら趣味でカレーづくりという形でしたが、今は主人も私も仕事を辞めて、夫婦2人でやっています。出張カレー教室も受けていて、結構遠方の方まで行くこともありますよ。お客様の声をもとに商品をつくったり、スタイルを変えていったり、試行錯誤しながら今の形になっていきました。幅広い年齢層の方に興味を持ってもらって、流行りじゃなく日常的にスパイスを使ってもらえるようにしていけたらと思っています。
出雲人が薦める出雲
- 海辺の多伎図書館のベンチ
読書が趣味なので、家から近い多伎図書館によく行きます。日本海に面して建てられたオーシャンビューの図書館で、バルコニーにベンチがあり、ここで波の音を聞きながら読書をする時間が大好きです。特に落日の頃はとってもきれいですよ。
- 恵季の洋菓子
知井宮町にあるケーキ屋さんです。実家の近くにあって小学生の時からよく利用させてもらっていましたが、ケーキでも何でもリーズナブルでおいしいんです。シュークリームもクリームたっぷりで、変わらない味にホッとします。