小さな港町で天然資源を活用
高級魚アマダイをブランド化

金築 茂美

出雲市小伊津町出身。父親が船主で中学卒業後に漁師となる。父、兄弟と共に「はえ縄漁」でタイやアマダイ釣りを。漁の機械化が進み、単独で漁ができることとなり独立。現在はアマダイのブランド化にも尽力している。

日本海に面した小さな漁村で
家族が助け合い暮らした幼少時代

日本海沿いにある港町「小伊津(こいづ)」という小さな集落で生まれ育ちました。小伊津は断崖斜面に町があり、昔は家の目の前が海で、母屋の下には船が停められるようになっていましたね。もとより漁師の町で、昔は町中の男衆が皆、漁に出ていました。

「男は漁、女は畑仕事」というのが小伊津の暮らし。男性が漁に出ている間、女性は断崖の斜面にある段々畑で麦やイモなどを栽培し、その後に漁の網の修復や準備を手伝うのが日課でした。子どもの頃は、祖母に「畑仕事を手伝え」と言われ、イヤイヤ付いて行ってましたが、ゴボウを斜めから抜くものだから途中で折れてしまい「せっかく出来たゴボウが台無しだー、いねぇー(帰れー)」と言われ、内心は「これで友だちと遊べる! シメシメ!」と山を下りた思い出もあります(笑)。

我が家は親父が船を持っていたので、長男と次男も漁師。三男坊だった自分も中学を卒業してすぐ船に乗ることになりました。うちに限らず、小伊津はどこの家も「はえ縄」というタイを釣る漁をしています。タイは年中、獲れるし単価も高い(笑)。そこで、自分はタイの餌になる生きたイカを獲りに夜中、漁へ出て、その獲れたイカを持って親父と兄貴が朝からタイ漁へ出たものでした。

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金築さんが生まれ育った小伊津の街並みと港。

島根半島沖は良い漁場
「はえ縄漁」でアマダイを釣る

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当時「はえ縄漁」では、縄を12巻きくらい持っていきましたね。手作業で網を上げていたので体力も必要で、縄を4つ引き上げたら、もうくたびれて限界でした。だから船に3人いないと漁ができませんでしたが、昭和40年代になると縄取り機が導入され、1人でも漁が可能となりました。今は8~10巻き程、縄をもって漁へ出ています。

島根半島沖は天然礁や岩礁があり、豊富なエサがあるようで、タイがたくさんいるんですよ。岩礁によっても違い、島根半島でも西で釣ったタイの方が、不思議なことに目方があるんです。しかし、養殖のタイが安く市場に出回るようになると、天然のタイは売れなくなり、自然とアマダイ漁が小伊津でメイン漁となってきました。

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おいしいアマダイをブランド化へ
鮮度にこだわった高級魚を県外へ提供

アマダイはタイの3倍くらいの値段。もちろん、タイよりアマダイの方がおいしいです! 他県へ行ってアマダイを食べてみましたが、やっぱり小伊津のアマダイが1番(笑)。

一つは、アマダイは身が柔らかく早く弱ってしまいます。昔は、今のように保存技術や冷蔵設備がなかったので、遠くに搬送することが困難でしたが、今は冷蔵運搬ができるようになり県外へもどんどん出荷しています。

口コミやテレビ放映のおかげで、徐々に「小伊津のアマダイ」が知られるようになり、最近は京都の料亭からも注文がきているようです。そこで、数年前から漁協組合と漁師が一丸となり「小伊津アマダイ」のブランド化を行っています。

もう一つは、漁獲の確保。以前は親タイから卵を取って孵化(ふか)させ放流していましたが、最近は中間育成したものを年に1回、海へ放流するようにしました。ほか、獲れたアマダイが傷まないように、船に大きな水槽を入れて水揚げするようにもしています。

アマダイは大きいほどおいしく、ぜんぜん味も違うんですよ! お吸い物にしたらよく分かりますが、脂が出て出汁の旨みもたっぷり。昼に水揚げされたばかりのアマダイをその日の夜に食べるだけでも鮮度も味も違いますから。アマダイは新鮮が1番なのです。ですから鮮度保持には力を入れています。

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水揚げされたアマダイ。大きさによって選別され、関西へ出荷される。

漁も時代とともに変化
若い力でブランド力を強化したい!

アマダイ漁は「日の出」目がけて漁に出ます。全長600mの縄に2mの枝縄を垂らし、その先に針を付けます。それを6~8本くらい海に投げ入れます。枝縄1本に5~6匹のアマダイがかかっていたら嬉しいですね! しかし水温が上がり、ぜんぜん獲れないこともあったり、1~2月は時化(しけ)で漁に出られないこともしばしば。昔は、生活に困ったこともありましたが、今は船の性能、縄取り機や魚群探知機の導入で、昔に比べ環境がとても良くなりました! 特に小伊津はアマダイのブランド化も進み、漁師でもしっかり生計が立ちます。

「漁師は大変でしょ…」と言われますが、稼働日は年間約180日ですし、慣れたらこんなにおもしろい仕事はないと思います。

昔は港に70隻もの船が並び圧巻でしたが、現在は20隻ばかり。もっと若い後継者が増えて、ブランド化に拍車をかけてくれればいいな!と思っています。

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アマダイの煮つけ。身は柔らかく、まろやかな味わい。

出雲人が薦める出雲

小伊津港の朝日 
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小伊津の港からは海から昇る朝日と沈む夕日が見られます。写真が趣味なので、漁が終わった後に港へ出て、その美しい風景を写真に。オレンジ色の朝日の写真を年賀状にすると喜ばれますよ。

小伊津の砂泥互層
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小伊津の町から少し東へ行くと長尾鼻があり、そこには約1500万年前にできたと言われる断層が見られます。日本海の荒波がつくりだした自然美は美しいですね。

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