人に喜んでもらえること、
シンプルな発想がモノづくりの基本。

きし まさお

岸 征男

(キシ・エンジニアリング株式会社)

出雲市出身。同志社大学卒業後、松江市東出雲町の佐藤造機(後:三菱農機、現在:三菱マヒンドラ農機)に入社。その後、出雲へ戻り、昭和60年にキシ・エンジニアリング株式会社を設立。産業用の省力機械、ロボットの製造、医療福祉機器の開発と製造などを手掛けている。現在は新エネルギー開発も行っている。

機械のものづくりに携わり、経験を積んで
地元で機械製造会社を起業

高校まで地元の出雲で暮らしていましたが、大学は同志社大学工学部機械工学科に入学しました。卒業後に父親が「戻ってこい」というので、島根県東出雲町の当時の佐藤造機(後:三菱農機、現在:三菱マヒンドラ農機)に昭和42年に入社しました。面接の時に「何がしたい?」と聞かれ、入社試験で「設計がしたい!」と希望を言うのもどうかと思い「どちらかというと…設計がしたいです…」ともごもご言うと「よし!どちらかと言うと…だな!!」と言われ、設計ではなく実験部の所属になりました(笑)。そこは、会社でつくった試作品の耐久テストをする部署でした。耐久テスト用の実験装置を設計して作り、それを使って耐久テストを行っていました。「どう設計して、壊そうか!」という感じですかね(笑)。

しかし、佐藤造機が昭和46年に倒産。その後、三菱重工が出資して三菱農機となったのです。これまで自由な社風だった会社が、三菱農機になると、社長も本社から来られ、縦割り仕事となりました。そこで15年勤めました。その頃、東出雲で暮らしていましたので、また父親が「お前は長男だから、そろそろ出雲に帰らないか」と言われ、結婚を機に出雲へ戻ることにしたのです。

出雲に戻ったのはいいのですが、結婚をしたので家族を養わなければいけません。そこで電気工事を請け負う会社の設計部に就職しました。そこでは照明の設計など、これまでと畑違いの仕事をしました。それに毎晩、酒を飲むのが仕事。それほど酒は強くなかったですが、店を3軒回って飲むのがノルマみたいな…そんな時代でもありました。しかし、そこにいた3年間は中小企業の経営や営業方法など勉強になりました。人生、何をやっても無駄ということはありません。社長には本当にお世話になり、いろいろな経験をさせてもらいました。

そして、昭和60年にキシ・エンジニアリング(株)を設立。新しい「機械」の会社をつくりました。

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自分より相手のことを考える
利他主義が成功の秘訣!

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新しい会社を作った当初は、辞めた後も繋がりのあった三菱農機の皆さんから、トラクターやコンバイン以外の農業機械の設計の仕事をもらいました。設立当初から仕事があり、本当にありがたかったです。それから徐々に仕事も増え、社員も増やし、会社は成長していきました。私は営業と構想と設計を担当、社員は製造を行っています。

会社の一番の柱は産業用の機械とロボットの製造です。商売のコツは「相手の利益を優先すること」。利他主義です。自分ではなく、相手がどうしたら儲かるか、喜んでくれるか、そういう精神が大事です。一般的には自分の会社が倒産しないように利己主義に走りがちですが、そういう場合は成績が上がらないと思います。しかし利他主義は周りから良い反応が起こってきます。若いうちは分からないかもしれませんが、60~70歳になるとやっと分かるかな(笑)。

それと「モノ」はデザインが優れたものが、使っていてもカッコいいし、使い心地もいいです。うちの産業機械も、すごくシンプルです。構造をシンプルにするとコストも下げられます。それに、はるかに安くつくれ、納期も早い。だから優先的に注文がきます。考え方一つですよね。

また、医療福祉機器の開発と製造も行っています。障がい者のボランティア活動をしていた仲間がいて、自分もその活動に入っていました。福祉や介護に関しては、保護するのではなく「自立できる環境をつくってあげることだと思います。我社では、どういう商品があれば自立できるかを考えた商品開発をしています。例えば、上下する車いすだったり、日本は畳文化なので床まで下がる車いすだったり。

あと脳障がいの人を助ける人口呼吸器なども手掛けています。これはアメリカのフィラデルフィアにIAHP(人間能力開発研究所)というところがあり、そこへ治療に来る人から注文があるのです。アメリカやイタリア、インドネシア、マレーシア、シンガポールなどからも。数は多くはないですが、世界各国から注文がきますよ。

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福祉用リフト付電動車椅子「リフティ」。座面が床まで下がり、座椅子としても使える。

飛行機に自動車好き
ものづくりの根本は幼少期にあった

本当は、飛行機が設計したかったのですが、日本は戦争に負けたことで、飛行機の製造も設計もできなかったですよね。小学校に上がる前からだったと思いますが、木を彫ったり、要らないハガキなどで、精密なカタチの飛行機を作っていました。昔はモノがない時代なので、あるモノを使って自分でつくるしかないのです。今は、自分で設計してラジコンをつくっては河原や田んぼに行って飛ばしています。

車も好きです。いろいろ乗り継いできました。今は、イタリアの小型車アバルトやベンツのツーシーター。ボルボ850。商用車にマツダのリベロが家にあります。昔はトヨタのS800を緑色に塗り替えて走っていました。どうも目立っていたようで、どこに行ったかバレバレでしたね(笑)。

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子供の頃からの趣味という模型飛行機。自分で設計するというこだわりよう。

環境にも人にもやさしい開発を考え
新エネルギー事業にも挑戦!

今、新エネルギーに着目して動いています。新エネルギーとは平たく言うと「脱石油」のこと。燃料電池は京都大学の先生方と共同研究しています。なぜ燃料電池かというと、自動車に使われている燃料電池はまだ大きく、それを小さくして車椅子用の電池にしたいのです。我社が先駆けで車椅子に使いたいと思っています。

あとは、バイオマスですね。ただチップではなく、単なる薪というか「木」の活用です。チップにするとお金も燃料も動力もかかるので薪をそのまま機械に入れて燃焼し、エネルギーをつくるようにするのです。木は硬いものから柔らかいものがあり燃焼時間もさまざま。薪が燃え尽きたら温度と時間を判断し、自動供給してハウス栽培に使おうというものです。そうすると、世界中でハウスが増えると思いますよ。日本は間伐材がたくさんあるので、荒れた山を再生する目的でも自動供給薪燃料機を使ってもらえたらいいですね。特に出雲はブドウの産地。ぜひ地元で活用していただきたいです。

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出雲人が薦める出雲

ノドグロの煮付け
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出雲にお客さんがいらっしゃったときには、ノドグロの煮付けを御馳走します。自分は料理が好きなので、家で料理をつくるときに、ゴボウを入れて濃口醤油と味醂で味付けをしています。

須佐神社
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本殿の後ろの大杉が好きです。やっぱり清々しい気持ちになりますね。神社に参拝した後には、神社の近くの川沿いにそば屋があって、そこでキジ蕎麦を食べて帰ります。

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