地域に受け継がれた
種子・食・文化を
大切に守り、繋げていきたい

むらおか だいごろう

村岡 大吾郎

(大切な種子を守る会代表)

千葉県生まれ。大学卒業後カメラマンとして7年ほど活躍した後、埼玉で就職。学生時代に興味を持った出雲の神在祭を訪れ、出雲の魅力に惹かれて2016年に地域おこし協力隊として佐田町に移住。佐田の在来種の大豆に出会ったことで種子に関心を持ち、種子にまつわる活動を積極的に行う傍ら、地域資源を写真に記録する活動なども行う。

「神在祭を見てみたい」運命を変えた出雲旅行

はじめて出雲に興味を持ったのは大学生の時。東京の大学で日本各地の伝統芸能を研究するゼミに入り、そこで撮影部隊として国内のいろいろなところへ行きました。日本の神事が好きで、中でも出雲の神在祭を一度見てみたいと思っていました。

大学を卒業してから1年ほどは、婚礼関係の会社で働きながらカメラの修業をして、7年くらいカメラマンとして各地を転々としていました。主に広告や建物、ブライダル等の撮影が多かったです。カメラマンを辞めて、埼玉で就職したのが2013年。そこで働いている時に、大学時代に興味を抱いた出雲に行こうと思い立ったんです。

出雲を訪れたのは2015年の10月でした。神在月に来て、大社の神迎祭から万九千神社の神等去出(からさで)神事までは見ようと決めて来ましたが、それ以外は一切ノープランで(笑)宿も取ってなくてどうしようかと思い、神門通りの観光案内所に行ったんですね。そしたら「まだオープンしてないけど…」と言って大社のゲストハウスきづきを紹介されて、現地まで連れて行ってもらいました。ゲストハウスの方も「まだ早いけどいいよ」って泊めてくださって。行き先も特に決めてなかったのですが、翌日はその方の車で観光案内をしてもらいました。

結局出雲には2週間ほど滞在して、出雲や松江エリアの興味のある場所をバスや電車で巡りました。帰りの夜行バスでは出雲の方と隣り合わせになったんですが、その方からも出雲はいいところだと話を聞かせてもらって。この旅で出雲の人の優しさに触れて、いろいろ助けていただき、改めて縁結びの地だなと感じましたね。それにやはり出雲王国の歴史を持つところだけあって、昔ながらの伝統芸能や地域の資源が身近にある、そういうところにすごく惹かれました。

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出雲の魅力に惹かれて移住を決意!

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元々どこかに移住したいと思っていたわけではなかったですが、その旅をきっかけに出雲への移住を決めました。地域おこし協力隊の制度は知っていたので、出雲の募集を探して応募して、佐田町に移住したのは2016年10月。佐田の農業法人に着任して、商品開発や販路開拓をはじめ農産加工や大豆栽培など、農作業を一から学びました。またそこの仕事だけでなく、地域に早く馴染めるようにと須佐神社や地元の催しに一緒に参加させてもらったり手伝わせてもらったりすることで、自然と地域に溶け込むことができました。

特に須佐神社では移住前にやっていたカメラマンのキャリアを活かして記録写真を撮らせていただき、写真集にすることもできました。そんな風に来た当初から地域の方たちに温かく受け入れてもらったので、地域おこし協力隊の任期が終わっても埼玉に帰ろうという気は全く起きなかったです。

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佐田の地域で受け継がれてきた在来大豆との出会い

移住して着任した農業法人では地元産の大豆を使った味噌の製造販売もしていて、地域の方が大豆を持参して味噌作りを委託されていました。

ある時、持ち込んでもらった大豆が普段使っている豆と違うものだったので何だろうと思い、その大豆の生産者に話を聞きに行ったところ、その家で代々栽培してきた在来種の大豆だと分かったんです。大豆の違いは蒸した時が一番分かりやすくて、その大豆は甘みが強くて味が濃く、もちっとした食感がありました。自分の住んでいる佐田町で、そうした古くからの在来大豆に出会ったこのことがきっかけとなり、在来種の大豆に興味を持つようになりました。

そういった在来種を受け継いでいくのは大切なことだと思いますが、後継者がおらずどんどん絶えていってるのが現実です。実際その大豆も、栽培されていた方がもう作るのをやめようとされていたところで、ギリギリで受け継がせてもらえました。

昔は嫁入りの際に、代々その家で育てて繋いできた野菜の種子を携え、嫁いだ先でまたその種子を広げていくような文化もあったと聞きます。大豆に限らず、そういう文化的なことが高齢化や後継者不足によって失われていくのは非常にもったいないと感じました。在来種の種子を守り、その文化を引き継いでいきたい。そんな思いで立ち上げたのが「大切な種子を守る会」です。

「大切な種子を守る会」では大豆や種についてたくさんの方に興味を持ってもらいたくて、地元の酒蔵さんと合同で行う味噌作りイベント、市内のゲストハウスで定期的に開く「醗酵食堂」、種子の交換会など、いろいろなイベントを企画しています。難しくて真面目なことばかりでは敬遠されてしまうので、まずは楽しいことから興味を持ってもらおうと(笑)

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名もない種子を一つでも多く守っていきたい

国内での大豆の生産率は7%と非常に低く、ほとんどが輸入に頼っているのが現状ですが、輸入作物の中には食として決して安全と言いきれないものもあります。例えばよく耳にする「遺伝子組み換え」の農作物。一例として、害虫を殺す遺伝子を導入することでその作物に虫がつかないようにする方法などがありますが、「食べた虫が死ぬ農作物」が人間にとって果たして安全なのかと疑問を感じます。

日本に限らず世界中で在来種の「種子」が絶えていますが、安全な食のためにも日本古来の在来種を大切にしたい。名もない、人知れず農家の方が育ててきた「種子」を少しでも守っていきたいと思っています。地域の種子を守り、地域の食をいただき、地域の文化を継いでいきたい。今は個人的に全国各地の在来種を地道に集めていますが、いつか地域の種子を集めて保管する、民間のシードバンクを島根に作れたらいいなという夢があります。元々何か志を持って移住してきたわけではないですが、そんな夢を持てたのもここでの暮らしのおかげ。今の自分は全て、出雲に来てから出会った物事で成り立っています。

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出雲人が薦める出雲

産直市「雲海の館」
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須佐神社に隣接する温泉宿「ゆかり館」の隣にある産直市場です。佐田町産の新鮮な野菜や個性的な農作物はもちろん、地元の方が作る旬の食材を使った加工品や手作りの手芸品や衣類など、バラエティーに富んだ産品がたくさんあります!

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毎月第2日曜日に、佐田町にあるスサノオホールで開催されるマーケットです。地元の踊りや地域のさまざまなグルメ、ハンドメイドの商品など、多様なお店が出店されるアットホームなイベントです。

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