歴史ある出西生姜を
後世へずっと残していきたい

永戸 豊

(出西生姜組合)

出雲市斐川町出西出身。学校を卒業後、家業である農家を継ぐ。当初は米や葉タバコを生産していたが、平成10年に「出西生姜組合」を設立し出西生姜栽培を本格的に始動。年々、出西生姜の出荷量が増え、平成29年現在は1年に10tを出荷している。(永戸 豊 様は令和2年9月にご逝去されました。心からご冥福をお祈りいたします。)

昔から出西地区で
育てられていた珍しい生姜

昔むかし、ここが「出西村」だった頃は、この一帯は海に面していたようです。北九州から流れ着いた御神体を八幡宮としてったところ、その社の辺りに生姜が茂ったという言い伝えがあります。それを裏付けるように「出西生姜」はこの出西地区でしか栽培できない珍しい生姜。繊維が少なく、やわらかく、辛みも十分あります。ここの土壌なのか、風土なのかは不明なのです。そして昔から「嫁にやるなら出西郷へ 生姜の匂いで風邪引かぬ」という唄があり、生姜は風邪予防としても知られていたようです。それと漢方として近国の諸大名へ献上品として賞賛されていたようですよ。

自分はこの出西地区で生まれ育ち、生姜が他の野菜と同じように普通にあったので珍しくもなく〝そんなものだ〟くらいにしか思っていませんでした。

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1本1本丹念に洗浄され、全国へと発送される出西生姜。

品質とおいしさが認められ
まちおこしの一環としてブランド化へ

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自分が父親のもとで農業を始めた頃は、出西地区を含め斐川町一帯は、米や葉タバコの産地でした。我が家も昭和28年から平成10年頃までは葉タバコの栽培を行い、冬になると土建の作業に出かけるなど、一般的な農家でした。

当時、生姜は野菜の1つとして、その時期になると栽培していました。祖父の時代は大根や里芋などと一緒に猫車に入れて行商をしていましたし、私の時代になると神立橋の上で仲買さんが野菜と一緒に売っていました。

「出西生姜」の栽培に力を入れるようになったのは、平成10年に「出西生姜組合」をつくってからです。もともと旧斐川町から、地域おこしの産物として出西生姜栽培の斡旋があったのです。そこで出西地区の5人が集まり、出西生姜をブランド化するため組合を立ち上げスタートしました。

はじめは手持ちの種が少なかったので、10~20アール程の畑で栽培しました。毎年種を取りながら10アールずつ畑の面積を増やしていき、4年目あたりから注文がくるようになりました。本当にありがたいことで、テレビや新聞などの取材により、出西生姜が瞬く間に広がり、注文数が間に合わない状態。畑は毎年増やしているのですが、今も生産量が追い付かない状況です。

一方で、売れる生姜と売れない生姜が出てきて、人気のある生姜だけを栽培しています。土づくりにもこだわり、米ぬかを使ったり有機農法を取り入れるなど、より品質の良い生姜をつくるために改良を重ねていきました。また連作は行わず、毎年植える場所を変えています。良いものを作るためには妥協はできないです。

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新生姜の甘酢漬け(ガリ)。「日本酒のアテに、丸ごとかじりながらいただくのが最高」と永戸さん。

地元企業と一緒になり
出西生姜を使った商品開発も

生姜づくりは、5月のはじめに生姜の種を植えると7月の初旬に、ようやく芽が出てきます。8~9月が旬の時期で出荷がはじまります。1日100150㎏を出荷するので夏の時期は毎日、大忙し。パートさんと力を合わせて乗り切っていますよ。11月の霜が降りるまで収穫が続き、出荷は12月まで行っています。11月のはじめには来年の種用に、生姜をムロにいれて保存。1~3月までは休みです。冬の間は遊んでいます?(笑)。

近年、出西生姜組合では1年に10tを出荷しています。旬の時期には生生姜をスーパーに卸していますが、商品化も進んでいますよ。中でも來間屋生姜糖本舗の生姜糖は有名ですね。他にはレトルトカレーやお土産菓子など30種類以上も商品となっています。また斐川町にある道の駅湯の川のレストランでは、生姜カレーや豚の生姜焼きにも使われ、人気メニューです!

うちでも生姜レシピをつくって、発送する時に入れています。喜ばれるのは「ジンジャーエール」。生姜をおろして、炭酸水で割ると美味しいです。甘みが欲しい人はシロップを入れてください。また、お酒のアテには、生姜を丸ごと酢(ラッキョウ酢などでもOK)に20分程度、漬けておきます。要はガリなのですが、ガリガリと生姜を丸ごとかじりながら、日本酒を飲むと最高! 止まりません。

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道の駅湯の川で出される、出西生姜を使った生姜焼き。

一緒にブランド産品をつくる
出西生姜農家を広く求める!

出西生姜組合として、出西生姜は伝統がある産物なので、後世に残していきたいとも思っています。しかし、当初5軒だったメンバーも少なくなり、今はうちを含め2軒となり後継者不足なのです。そんな中でも出西生姜の注文は年々増え、供給が間に合っていない状況。うまく回れば儲かるブランド産品なので、出西生姜農家をやりたい人を求めています。

新規就農は大変なので、最初はノウハウを身に付けてもらい、徐々に販路を広げながら畑の面積を増やして行ってほしいです。販売を軌道にのせることが1番大切なのです。

「後継者づくり」それが、これからの務めですね。

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出雲人が薦める出雲

出西窯
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同じ地区で付き合いは古く、ご近所さん感覚で接している窯元。全国には出西窯ファンが多く、遠方からも窯元を訪れます。
また、ゆっくり過ごせる憩いの場として展開中のようです。

道の駅 湯の川
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旬の時期には出西生姜の販売はもちろん、レストランの生姜カレーや豚の生姜焼き、うどんなどにも使用されています。ソフトクリームやジャム、ジンジャーエールの商品もあるので、ぜひどうぞ。

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