高校教師から陶芸家へ
使いやすく愛される器をつくり続ける

野津 明美

(工房のつ)

出雲市出身。東京の大学を卒業して帰郷、高校の英語教師として9年間教壇に立った後、退職。松江の陶芸教室や窯元に1年間通い、高等技術専門校で窯業(ようぎょう)を学ぶため愛知県瀬戸市へ。瀬戸市の陶芸家藤井憲之氏に4年間師事し、2002年に出雲市多伎町で築窯。青白磁、白磁、染付を中心に、優しいぬくもりのある作品づくりを続けている。

9年勤めた教師を辞めて一転、陶芸家の道へ!

陶芸を始める前は、高校教師をしていました。東京の大学を卒業して島根に戻り、県西部の学校で働きながら一人暮らしをしていて。自分で作った料理を好きな食器に盛り付けるなど、その頃からなんとなく陶磁器を意識していた気がします。元々両親が備前焼などを好み、家に花器や食器があったので、そういった影響もあったかもしれませんね。お給料で自分の気に入った食器を探して買うこともありました。その頃は個性的で手作り感のあるものを好んでいました。

教員時代はとにかく忙しく、陶芸は興味を持ちつつも取り掛かる余裕はありませんでした。自分は教員という職業に向いていないかもという思いもあり、教員になって9年目に退職しました。

辞めてからはまず、「やりたかったことをしよう」と、早速、松江の陶芸教室に通い始めました。そこからですね。「これを仕事にしたい!」という思いが出てきたんです。その頃、出雲市内のギャラリーで見てすごく気に入った作品があったので、その窯元に行って「お手伝いさせてください!」と志願しました。今思うとものすごい行動力でしたね(笑)工房のお掃除やお手伝いといった形でしたが、週1回の陶芸教室とは別に、その窯元にも通わせてもらいました。

そうして教員を退職してから1年が経ち。全国には窯業を教えてくれる職業訓練校がいくつかあるのですが、私は瀬戸市にある高等技術専門校の試験を受けて、入学することになり、瀬戸市へ引っ越ししました。

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瀬戸市で一目惚れした作家に師事。修業の後、故郷で築窯

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瀬戸の学校は15時半頃に終わるので、私はまた空いた時間にお手伝いをさせてもらえる窯元を探しました。どうせなら自分の好きな作家さんのところがいいと、いろんな作品を見て回ったところ、瀬戸で活躍される作家の藤井憲之先生の作品に一目惚れ。藤井先生の作品は磁器で、私はどちらかというと陶器や焼締め(釉薬(ゆうやく)を施さずに高温で焼成すること)の器が好きだったのですが、先生の作品は固い材質のはずなのに優しい柔らかさがあって、その繊細なフォルムにすごく惹かれて。再び行動力を発揮してお願いに伺ったところ、弟子として勉強させてもらえることになったんです。

まだ学校に行き始めたばかりでしたし、「芯出し(ろくろを回すために陶土の中心を据えること) 」という作業もできない状態でした。手回しろくろを借りて家で練習して、お手伝いをしながら学校に通う日々。学校は1年間でしたが、卒業してもそのまま先生のところで修業しました。3年ほど経って急須も作れるようになり、先生からもそろそろいいだろうということで、島根に帰ることにしました。

帰るにあたり、どこか仕事場にできる空き家がないか探していて、両親に相談したところ、叔母の土地だった今の場所を使うように言ってくれたんです。叔母も焼き物に興味があったということもあり、私よりも周りの方が乗り気で(笑)父が建具の仕事をしていたこともあり、工房や事務所の家具は、ほとんど父の手作りです。一から作る覚悟をしていたので、本当にありがたいことでした。そうして周りの協力を借りながら築窯し、2002年に「工房のつ」をはじめました。

 

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オーダーメイドでつくる、その人に一番合う器

工房を開いてからは、時々作品展などもさせてもらいながら徐々に作品も増えていきました。地元なので友人や親戚もおりまして、そういった方たちの応援もあって頑張れましたね。先にも申し上げたように、父が建具職人だったので、茶托などもたくさん作っていたんですね。ですから、上の湯呑みは私が作り、下の茶托は父が作りといった、親子合作なんかもよくやっていました。ものづくりが好きなのは父の遺伝かもしれませんね。

今はオーダーメイドで作らせていただくことが多いです。やはり食器って人によって使いやすい大きさや形が全然違うので、もう少し小さくとか、ここに高さをつけてとか、そのお客様の要望に合わせてお作りしています。

例えばご飯茶碗でも、大人の男性用女性用と基本的にはサイズがあるんですが、最近は大人の方でも小さい茶碗がいいという方がおられるんですね。でも、小さいのは子ども用のかわいらしいデザインが多いので、大人用の小さい物を作って欲しいと。そういった需要もあるのかと勉強になることもあります(笑)

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普段使いの食器も、自分の気に入ったものを使ってほしい

工房を開いて今年で21年目になりました。作品は自分では変わらないと思うんですが、周りには変わったって言われることもあって。昔に比べると、あまり冒険をしなくなっているのかもしれません。余裕があると違うものを作ってみようかなと、香炉などを作ってみるんですが、失敗することも多々あります。焼き物って結局、どんなに慣れても、何回作っても、最後に窯から出してみないと分からないんですよね。だから何となく、失敗したくないっていう気持ちが出てしまっているのかも。大皿などの大きな作品にあまりチャレンジしていないので、今後はそういった大きなものも作っていきたいですね。私の絵付けが好きと言ってくれる方も多いので、それを活かした作品にも挑戦したいです。あとはやっぱり、皆さんに末永く使ってもらえるような器を作っていきたいという思いが一番ですね。

1日3回、毎日取る食事に器は欠かせません。高い食器である必要はもちろんありませんが、普段の何気ない食事でも自分の好きな器に並べるのって、それだけで気持ちが上がるので、せっかくなら気に入った器を使ってほしいなと思います。例えば冷やっこ一つにしても、器一つで気分も味も全然違ってくると思いますよ!

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出雲人が薦める出雲

神西湖のしじみ
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湖陵町の出身なので、神西湖は幼少期から見ていた大好きな場所です。風景もとても好きですし、ここでとれるシジミが絶品。貝の身が大きくてすごくおいしいので、よくお味噌汁にしていただきます。

多伎の海の夕日
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工房から多伎の海岸線が見えるので、海に落ちていく夕日をよく眺めています。このあたりは「夕日百選」にも選ばれている人気の夕日スポットで、夕刻の空と海のグラデーションは本当にきれいです。

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