出雲の風土と暮らしの中で
用の美から生まれた出西窯

株式会社 出西窯
陶工 島根 大
営業・販売 横木 文葉

【プロフィール】
島根 大
松江市出身。岡山の大学でモノづくりに目覚める。卒業後、出西窯に入り研修期間を終え、陶工となる。途中、独立を志すが苦戦し出西窯へ。トータル10年勤務を経て、年4回の登り窯の当番もこなしながら、作陶している。
横木文葉
徳島県出身。神戸の大学へ入学し、東京で映像制作会社へ就職。TVやCM、サイネージモニター等のプロデュースを行う。結婚を機に、ご主人の実家がある出雲へIターンし1年、営業と販売を行っている。

最初は1ファン! 好きな窯元で働く喜び

どのような仕事をされていますか?

横木:私は営業と販売をしています。実は、結婚を機に昨年の8月、東京からIターンしてきたばかり。でも、東京にいるときから「出西窯」を知っていて、よく行くお店や新しくできたセレクトショップに置いてあり、大好きな窯元でした。そこにタイミングよく就職することができて、本当にラッキーだと思っています!

島根:自分は陶工です。今は主に“饅頭蒸し器”をつくっています。テレビで放映されてから注文が殺到し、生産が追いつかない状態。「嬉しい悲鳴」とはこのことを言うのでしょうね。“饅頭蒸し器”は取っ手をつけたり、蓋をつくるなど、さまざまな工程がある器。手間がかかるので1ヶ月で100個くらいしかできません。また凹凸のある珍しい釉薬を使っています。出西窯の初期からつくられていたもので、当時は文字通り饅頭を蒸していたのですが、今は蒸し料理に使われています。ステンレス製が多い中、陶器は珍しく、色も形もいいのでオススメですよ。

横木:お客様でよく「この器はどう使ったらいいの?」と聞かれることがあります。饅頭蒸し器もその一つ。今、いろいろなワークショップを企画し開催していて、饅頭蒸し器の使い方やレシピ提案もこれからやってみたいことの一つです。難しい料理じゃなく、トウモロコシやイモを蒸すだけでも十分。 いつもキッチンに置いてもらい、毎日使ってもらいたいですね。陶器をとおして幅広い世代の方に来ていただき、出西窯を好きになってほしいです。

島根:確かに出西窯を好まれる層は幅広く、民藝(みんげい)を好きな人から若い人まで、県内外さまざまな人が店や工房の見学に来られます。粘土も釉薬も島根の原料にこだわるからこそ地域色も出て、特に地元の人に喜んでもらえていると思いますね。

横木:最近は青色の器が人気ですが、昔から出西窯を知るお客様からは「出西はやっぱり黒だよね」と言われます。長年愛されている窯元なのだとお客様から教えていただきます。

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左:島根さん、右:横木さん

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黒色が美しい、饅頭蒸し器。

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近年、特に女性から絶大な支持を集める呉須釉の器。

毎日使うものだから、美しく心地よいモノをつくる

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出西窯の魅力はなんですか?

島根:松江市出身でありながら、出西窯を知ったのは岡山の大学に通っていた頃です。モノづくりに関わる学部だったので、研修旅行で出西窯に来ました。その時に感じたことは、田舎でありながら先代をはじめたくさんの職人さんが意気揚々と仕事をしていたこと、そして当時、年配の陶工さんが多くおられたのに、つくっている器がモダンだったことが驚きでした。要は、若かった自分からすると、田舎のおじいちゃんたちがエッグベーカーや、ピッチャーを作っているのでビックリしたのです(笑)。後に知ったのですが、柳宗悦や濱田庄司、イギリスのバーナード・リーチや安来市出身の河井寛次郎など民藝運動に関わったすごい方々から指導を受けた工房でした! こんな田舎なのに(笑)。とても面白いところだと思いました。

横木:出西窯は日常で使える器です。少し重めなので、毎日ガンガン洗っても大丈夫(笑)。生活の中のエッセンスとして楽しみを増やせる魅力があります。私はパン皿が好きで愛用しているのですが、ワンプレートでご飯を仕上げるのに最適です! もちろんパンやサラダやパスタを入れてもOK! 毎朝、使っていますよ。

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天日での乾燥工程。出西窯では完成までのさまざまな工程を、自由に見学ができる。

暮らしやすい出雲で子育てを楽しむ!

プライベートはどのように過ごしていますか?

横木:今、妊娠6カ月になります。家族が増えるとやはり家が欲しくなり、建築家の主人が実家のリノベーションを構想中! 私は住宅街育ちだったので、自然あふれる出雲で子育しながら家族と暮らせて、とてもいいな~と思っています。最近は、時間を見つけては子どものおくるみを縫ったり、赤ちゃんに会う日を楽しみに暮らしています。

でも出雲に来たばかりで、保育園など地元情報が疎く、子育て情報のアンテナを張っているところです。とりあえず今は石見銀山や鰐淵寺など観光地巡りをして、お店に来られたお客様にご案内できるように島根を勉強中です!

島根:結婚をして妻と子ども2人で暮しています。体を動かすことが好きで高校時代にボートをしていたこともあり、地元のレガッタの指導をしています。あと、ランニングも少々。陶工という仕事は腰や肩に負担がかかるので、体力づくりと体のケアに気を付けているところです。

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インタビューが行われたのは、工房隣にある展示販売館「無自性館」。1000点以上の器に出会うことができる。

出西窯らしさを大事にして「個」を生かす

―これからやってみたいことは何ですか?

横木:私の中で仕事はずっと楽しくやりたいと思っていて、その中で「たくらみ」を入れていくことを心がけています。例えば、野花をさりげなく飾ることでお客様から「いいわね」とほめてもらえたら「ラッキー!」みたいな(笑)。ちょっとしたことですが、コソコソと自分らしく楽しんでみたいのです。小さな楽しみが重なり、いい結果やいい仕事につながればいいかなと思います。

島根:将来「土鍋」をつくってみたいです。今、出西窯にはエッグベーカーのような小さいものはあるのですが、お米を炊くような土鍋はつくっていません。直接火にかける陶器は粘土の調合や釉薬も特別なので、これから研究して実験していき、出西窯らしさを損なわず、かつ斬新なモノをつくりたいですね。出西窯は民藝に準じ「用の美」を大事にしています。使い勝手がよいものは必然的に美しいカタチになります。

横木:そう!カタチもいいし、色もいい、そういう器は美しいですね。私は「白」が好き!使い込めば使い込むほど、いい味わいになっていくんですよ。

島根:出西窯はいろいろな職人が協働で仕事をしていて、島根では珍しい窯元です。とは言え、陶工それぞれ得意なところがあるので、その人の仕事を間近に見ながら仕事をすることができます。同じものをつくっていても、人によって不思議と違うので、人の手がつくりだすモノづくりの醍醐味だと思っています。

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工房の東側にある6連房の登り窯。毎年11月下旬に開催される「登り窯・炎の祭り」には全国から多くの人が訪れる。

出雲人が薦める出雲

荒神谷遺跡の古代ハス
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蓮が見ごろになると、毎年、弁当をもって早朝に蓮の花を見に行きます。5万本の蓮が咲くと圧巻!「二千年ハス」と言って、推定2千年前の太古の蓮も咲いています。見ごろは7月上旬。

なぎら長春堂の麩まんじゅう
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出雲市街にある小さな和菓子店です。季節の生菓子や本わらびもおいしいのですが、夏期限定の「麩まんじゅう」がオススメです。フワッとした食感のとりこです!

出雲人が薦める出雲

出雲民藝館
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出雲の豪農屋敷を改装した民藝館です。昔の陶磁器はもちろん、木工品や織物なども展示されています。敷地を入ったときの門や道がステキ! 用の美を極めたモノたちがたくさんあるので、何度訪れても飽きません。

鍛冶屋と料理
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平田にある小さなイタリアンレストラン。手作りピザやジェラートなどが食べられて、おいしいです! 夜は1日1組限定なので、なかなか予約はとれませんが、お手軽に味わいたい方には早めのランチをオススメします。

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