私はブラジルの日系２世です。日本で仕事をしようと３８歳の時に来日しました。はじめは兵庫県姫路市で暮らし、車のエアバックをつくる会社で16年間働いていました。

念願叶い平成28年（2016年）8月には自営で焼肉店をオープン！しかし、その２か月後にリーマンショックで大打撃を受けました。お店を閉めるにも多額のお金が必要となり、２年半がかりでやっと閉店することができました。

しかし、めげていては生きてはいけません。一大決心をしてブラジルから日本へ来たわけですから！その後、キッチンカーを購入して、移動式で飲食店を再開しました。最初は主に関西方面へ。大阪、神戸、加古川、篠山などを巡り商売しました。その頃から出雲には、在住しているブラジル人を頼って１か月に１度訪れていましたね。

キッチンカーはいろいろなところへ行けるので楽しかったのですが、車を停めるところや電気の充電などを考えると、やはり不便でした。

腰を据えて店を構えようと考えたときに、思い浮かんだ地が「出雲」でした。出雲を訪れるたびに「田舎で静か、とてもいいところだなー」と思っていました。決め手は、出雲にブラジル料理店がなかったので、オンリーワンの店が開けると思ったからです。

今はNPＯ法人ブラジル・サポートセンターの副理事長を務めています。こうしてお店をしているとブラジル人が集い、必要なものや困ったことの話を聞く機会が増えてきたのです。そこで日本語が話せる私が自然にサポートをする流れとなりました。例えば、住まいや仕事、通訳や翻訳など…。やはり言葉の壁が大きく、行き違いがあると仕事や家の賃貸契約すらできません。

2019年春には、約３６００人のブラジル人が出雲で暮らしていましたが、2019年末には約３０００人に減りました。そこには仕事に対しての不満があると感じています。実は、ブラジルから来た人はエンジニアや弁護士、歯科医など大学を優秀な成績で卒業した人が多く、夢をもって日本へやってきた人たちなのです。しかし、日本語が話せないために仕事は工場で働いている人がほとんど。もっと、いろいろなことができるブラジル人が多いのに…。

その現状を少しでも改善できるよう、私たちNPOがサポートできたらいいと思っています。

先日は、あるブラジル人の男性が日本語を話せないから仕事に就けなく「何をしたらいいですか？」と相談にやってきました。「それなら！」と日本語の勉強も兼ねて自分がもっているキッチンカーを貸してあげました。彼はそのキッチンカーでタピオカクレープやホットドックをつくって営業しています。ブラジル・サポートセンターの事務所は店の後ろにあるので、キッチンカーにも気軽に寄ってもらえるようです。

最近はこれといった趣味はなく、お店とＮＰＯで忙しくしています。人の役に立つことが好きで、いろいろな人から「PAIZAO（パイザウ）」と言われています。お店の名前としたPAIZAOは「大きなお父さん」という意味なのです。

最近は、ブラジル人が出雲を去ってしまう前に、なにかできないか？ということばかり考えています。なぜなら、みんな出雲が好きで暮らしているので、ちょっとのつまづきで、どこかへ行ってしまうのはとても惜しいからです。

より良いサポートができるよう、無料職業紹介所の資格をとり、看護師やヘルパーなどの仕事を紹介しました。これからはサポートを行っている複数のＮＰＯと連携をとり、情報共有ができるようネットワークをつくろうと思っています。

サポートは一人ではできません。個が集まることで、大きな力になり、広がりが持てます。ぜひ、皆さんも情報があればお寄せください。そして、お店「PAIZAO」に来てブラジルの人と交流してくださいね！