「コマ大戦」を通して
人と人、企業と企業が繋がる
吉川製作所
【会社プロフィール】 株式会社 吉川製作所 昭和42年創業。「人を信じて信頼関係を大切にする」をモットーに歩む。電機機械部品、自動機・省力化機器部品を製造。主に大手メーカーの業務用ビールサーバーや食器洗浄機などの部品を手掛けている。
最新鋭機器を導入し
削る技術でニーズに応える
―どのような仕事をされていますか?
吉田:仕事は主に大手メーカーの業務用のビールサーバーや食器洗浄機などの電機機械部品の加工を手掛けています。お客様の期待や信頼の応えるように、早納や精度を極めたものづくりを行っています。
梅木:他には、自動車関連の部品なども。基本は受注で、発注先からきた図面をもとに製造しています。中には、どこに使われている部品なのか分からないモノもありますが…。
吉田:新しい食品機器がどんどん出回り、常に違う部品を製造することが多いのです。加工部の中でも部署が分かれ、皆が同じ機械を使えるわけではないので分担して作業を。
梅木:私と松原は、パソコン上で製造ソフトCAD/CAMを使いコンピューターで部品の加工プログラムをつくるプログラマーです。
松原:製造機械でもプログラムは行えるのですが、そこではできない複雑な形状のものがあるときは、私たちプログラマーの出番となります。
吉田:私はオペレーターで、機械に刃物をつけて部品の加工を手掛けています。自分自身も機械側でプログラムをつくることもありますが、複雑化してきたときは梅木や松原にお願いしています。
技術とノウハウと知恵を生かし
全日本製造業「コマ大戦」に挑戦!
―「コマ大戦」に参加したきっかけは?
松原:会社での仕事は主に受注製造のため、オリジナル製品をつくることがありません。
吉田:だから「コマ」なのかなと…。
梅木:仕事とは別に、私たちは「コマ」を一から設計、製造し“完全オリジナルのコマ”をつくり、全日本製造業の「コマ大戦」に出場しています。
吉田:「コマ」を手掛けたきっかけは、山陰の製造業の勉強会があった時に、他の会社の方に「吉川さんもコマ大戦に参戦してみらん?」と誘われたからです。3次元の製造ソフトCAD/CAMを山陰地方でも使っていこうという目的で、そのソフトで「コマ」の図面を描き、製造するのです。おもしろそうだと思い、挑戦してみることにしました。これまで、さまざまな部品をつくってきたので、自信もありましたし、そんじょそこらじゃ負けないだろうと自負もあって!
松原:2013年の9月に全日本製造業コマ大戦中国場所の島根予選大会があり、その予選の上位3チームが山口で行われる中国場所(G3)に参加できます。まず、それに参加しようとコマづくりをはじめたのです。
吉田:手はじめに県外の常連チームの会社からレプリカ借り、形状やら材質など、あれこれと思考錯誤して試作し、ひたすら回す…。その繰り返しでしたね。
梅木:そしてオリジナルのコマが完成! 会社の皆に、「優勝してくるけん!」「トロフィーを持って帰るけん!」と意気揚々と大会に出場しました。
松原:10社くらいの参加でした。が、結果…最下位…。
吉田:もう「ガクッ」ですよ…。会社の皆にあれだけ大口叩いていましたから…。
梅木:大会が終わり、近くのファミレスに寄って3人で「うわぁ~どうしよ…。会社に帰れん…」と言って落ち込みましたね。勝つものだと思ってましたから。
松原:しかし運が巡ってきて、敗者復活枠があったのです!しかも他の会社が辞退したおかげで、本戦で中国場所に出場できることになりました。もう、こうなったらダメ元です。
吉田:予選の敗因は、土俵でした。大会の土俵は、なだらかなすり鉢状で中央が少しくぼんでいます。私たちが試作した土俵は平らだったので、大会の土俵では回らなく、戦わずして負けた…という感じでした。
松原:改良に改良を重ね、材質は重量があり加工しやすい銅タングステンに。コマには島根県観光キャラクターの「しまねっこ」をあしらい、島根県もアピール!Tシャツもおそろいでつくり、中国場所に挑みました。
吉田:そして中国場所では、準優勝!
松原:しかし準優勝しても、優勝チームに参加チームの全部のコマが没収されるのです。そうなると、やはり目指すは優勝! それからさらにコマづくりに熱が入りましたね!
アイデアと創意工夫で
念願の優勝!しかもその年2度も。
―毎年、コマ大戦に出ていますか?
梅木:2014年には、西日本ブロック大会(G2)に繋がる予選が北九州で行われ参加しました。37チームが集まり、ブロック予選では1位通過。しかし決勝トーナメントでは、その大会に優勝したチームに1回戦で当たり敗退…。
松原:敗戦理由は、先方のコマの羽根が途中でパタっと開き、その羽根にアッという間に弾き飛ばされたからです。
吉田:どのチームもアイデア勝負。趣向を凝らしたコマをつくってきます。しかし、極端過ぎるコマが出始めたので、2015年の世界大戦前にルールが改正。材料の制限はないのですが、直径20mm以下。最近は高さにも制限がかかり、全長60mm以下となったのです。
梅木:いつも優勝するコマは一癖も二癖もあるコマ。そのコマに勝つために、いい大人が悔しがり、勝つためのコマをつくるわけです。各チームがコマにかける思いはスゴイですよ。
吉田:そうなんですよ。先を見てつくらないと後手に回ると負けてしまいます。
松原:やっと優勝できたのが、2015年に出雲産業フェアで行われた出雲特別場所でした。
吉田:同年、福山で行われた大会にも優勝しました。そのコマは、土俵の端で止まり、その場でずっとクルクル回っています。普通は、次第にへこみのある中央に下りてくるのですが、相手のコマが長くて突起のあるものだと弾かれるので、弾かれないように中央に下りない作戦です。この作戦で優勝しました。その大会で、他のチームのコマを総取りしました!他のチームのコマをみて研究できますし、いろいろ創意工夫されていて、見ていておもしろいですね。
梅木:しかし優勝したとはいえ、私たちのコマに勝つように、他のチームはまたアイデアを練ってくるのです。
コマで繋がる企業の輪
仕事もモチベーションもアップ。
―コマ大戦に出場するメリットは?
吉田:たかがコマ、されどコマです! 大会に出場するチームは必ずしもガッツリ勝ちにいくチームばかりではなく、企業アピールも兼ねています。参加することに意義があるというか、企業同士の交流だったり、技術アピールであったり。
梅木:私たちのチームは材を削ってコマをつくるのですが、他の企業チームは3Dプリンターでコマをつくっているところもありますね。他には、型に流し込んでコマを成型するところもあり、製作環境も企業によってさまざま。
吉田:私たちも仕事時間の合間を見つけて、あーだのこーだの言いながらコマをつくっています。一部の人からは「コマばっかりやってるんじゃないか?と言われますが、コマをやることで仕事のモチベーションも上がり、大会が近付くにつれ、仕事を早く終わらせようと集中できます。
梅木:それに会社の良いPRになっているかと!同じ業界からは、コマをつくっている会社なら、それなりの技術をもっていると見てもらえますし。
松原:企業同士の繋がりができて、まわりまわって仕事につながったりもしています。マイナスにはなっていません。
吉田:これからも仕事にコマづくりに精進していきます!
- 出西生姜
自宅が斐川町出西地区なので「出西生姜」がおすすめです。出西でしか育たない不思議かつ希少な生姜です。硬い繊維質が少なく、おいしいですよ。出西生姜をつかった生姜糖やジンジャエールなど商品もたくさんあります。
- あすっこ
家族みんな「あすっこ」が大好きです。「あすっこ」とは島根県で誕生した、ビタミン菜とブロッコリーを配合してつくられたオリジナル野菜。湯がいてポン酢で食べるのがおすすめです。
- 出雲の釣り場
釣りが趣味で、よく釣りに出かけるのですが、出雲は釣り場が充実しています。そして魚もおいしい!県外で刺身を食べますが、やっぱり自分で釣って、さばいたものが一番です!