出雲は商売している人が多い地域。
「ものづくり」に関しては
伝統やご当地感、アイデアを生かしている職人さんが多い。
今日は職人さんと出雲で暮す女子と
出雲の工芸品を囲みながら食事会をしました。
左から
- 西田真麻子(にしだまあこ)さん【香司で大活躍中のIターン女子】
- 多々納昌子(たたのまさこ)さん【出西織 2代目】
- 長瀬理更(ながせりさ)さん【出雲市出身、コワーキングスペースオーナー】
- 森山登(もりやまのぼる)さん【森山ロクロ工作所 2代目】
- 松尾絵葉(まつおえば)さん【九州出身のIターン女子】
- 長田匡央(ながたまさお)さん【長田染工場 5代目】
みんないただきまーす。
まあこさんわー、おいしそう!
りささんサラダや鴨肉料理が盛られているのは出西窯の器ですよね!出西窯の器
多々納さんそうですね。夫は出西窯を、私は出西織を手掛けています。
絵葉さんものづくり一家なんですね!素敵です。
多々納さんこのテーブルクロスは私がつくったものです。テーブルクロス
りささんキレイなブルーですね。料理が映えます!
まあこさんパンやパスタの木の器は森山さんがつくられたものですか?木の器
森山さんそうです。昔は木地といえば漆塗がメインでしたが、最近は木目を出したナチュラルなものが人気ですよ。
まあこさんこの木のスプーンもですか?
森山さんこれは「おかや木芸」さんのスプーンですね。
りささん持ちやすいし、使い心地がいいですねー。
絵葉さん使い心地がいいモノって、美しいカタチをしていますよね。
森山さん出西窯に代表されるように「用の美」といって昭和初期の頃に民藝がはやっていたので、出雲のものづくりにも影響していますよ。
多々納さん長田さんの染工場はいつからですか?
長田さんうちは明治28年の創業です。先祖は徳島で藍売りの行商をして各地を回っていたそうです。出雲へ行商に来たときに、当時の主が我が子を出雲に残し、その子がここで藍染職人になったらしいです。
まあこさん今では考えらえない…。すごい話ですね…。
長田さんそうですよね。その子孫が私で、父が4代目、私が5代目になります!
当時、高瀬川沿いには10数軒も染物屋があったようですが、今ではうち1軒となりました。
森山さん時代の流れですかね…。うちも時代により、つくるものが変わりましたよ。
絵葉さん森山さんは、どんな作品をつくられていますか?
森山さんこの調味料入れもつくりました。昔は「こんな手の込んだモノがつくれるんだ!」と技を生かした難しいモノばかりつくっていました。調味料入れ
長田さんそれはスゴイですね!技術があっての職人さんですから。
森山さんその頃は、茶たくや銘々皿(めいめいざら)や…、出雲では休憩のことを「たばこ」といいますが、その時に使えるものを多くつくっていました。焼きもの器と合わせる感じです。
長田さん出雲にはお茶を飲む文化がありますからね。
森山さん今は、このパン皿のように、他と合わせるものではなく材料と相談してつくっています。パン皿
絵葉さんなるほど!パンの湿気を木が吸ってくれますよね。
りささんそういえば、森山さんの木のカップ&ソーサーも見かけたことがあります!
森山さんはい、つくっていますよ。
昔は汁物と言えば漆のお椀が一般的でしたが、最近は木目のものが増えてきましたよね。
多々納さん漆より気楽に使えますよね!あたたかみもあります。
まあこさんこのパスタの器は出西窯ですよね。よく「出西ブルー」と聞きますが、やはり青色が人気ですか?
多々納さん最近、青色が人気のようですよ。通の方は黒色を好まれるようです。
長田さん多々納さんの出西織も藍染めをされていますよね。
多々納さんはい。藍染めや草木染など、なるべく自然のものを染めています。
出西織は義母が倉敷民藝館の工藝研究所で学び、はじまったものです。嫁に来た私、そして今は娘も引き継いで行っています。
まあこさん女性3代でされているのですね!
多々納さんはい、そうです。
出西織は「組織織り(そしきおり)」と言って、縦糸は無地や1色、そして横糸を替え、工夫をしながらいろいろな織り方をしています。
りささんこのコースターもですよね。女性がつくられているからか、やさしい感じがします。出西織「組織織」コースター
多々納さん生活のカタチが変わってきているので、40~50年前に母がつくっていたモノ―例えば、床の間や花瓶、灰皿の下に敷くモノはもうつくっておらず、主にコースターやテーブルクロス、ランチョンマットや名刺入れなど、使い道がハッキリしたものをつくっています。
絵葉さんこのコースターもいいですね!
りささんどの作業が、一番時間がかかりますか?
多々納さん糸を染める作業です。うちの藍染めは3~4日かかります。なので、長田さんところの作業はもっと手間がかかると思いますよ。
まあこさん長田さんは藍染め一本ですよね!それは風呂敷ですか?
長田さんそうです。この風呂敷は大きいでしょ!
出雲地方では嫁入りに風呂敷を持っていく風習があり、これは藍で染めた風呂敷です。鶴や亀、そして家紋を入れています。藍で染めた風呂敷
絵葉さんホントだ!絵が素敵ですねー。
長田さん子孫繁栄を願って描いています。風呂敷は江戸時代、明治時代の民具の一つです。今で言うカバン!着物を包んだりしていました。〝大は小を兼ねる〟と言われているように、大きな風呂敷が重宝されていたようです。今は装飾としての活用が多くなりました。
りささん風呂敷を壁に飾っておられるお宅を見たことがあります!
長田さんお!嬉しいですね。うちでは筒描き(つつがき)という技法で、手書きで絵柄を描いています。
絵葉さん染めてから白く描かれるのですか?
長田さん普通、そう思いますよね。実は、画のところは「のり」を付けて染まらないようにしているのです!
みんなへぇ~~~~。
長田さんおおよそ、この風呂敷は18回くらい藍染めしています。
藍で染めた風呂敷
まあこさんえ!そんなに染めるんですか?
長田さん藍染めは色が濃いほど、良いモノとなります!
多々納さんそうですよね!うちも藍染めをしているので分かります。よく「褐色(かちいろ)」っていいますよね!
長田さんさすが多々納さん!そうです「褐色(かちいろ)」は藍をもっともっと深くした色です。
多々納さん昔、武家の家では「かち=勝」とかけて、褐色を身に付けていたようですよ。
まあこさんあ!サッカーの日本代表の〝ジャパンブルー〟もそうですか?
長田さんそうだと思います!僕も目指していますから!!
みんな??? 何を?
長田さんサッカーで日本代表になることです!
みんな大笑
森山さん日本代表のユニフォームを、ぜひ藍染めしてください(笑)
絵葉さん私は九州からIターンしてきたばかりですが、出雲はものづくりに適したところなのですか?
多々納さんうちでは綿を栽培して糸を紡いでいます。土地が砂地なため水はけがよく、日当たりも良いので、綿が育ちやすいです。昔もこの地域で綿をつくっていたと聞いたことがあります。それと、亡くなった出西窯の義父には理想があって、焼きものや織物などを産業として行った方がいいと言うことでした。出雲人の粘り強い人柄は職人気質に合っていると思いますよ。
長田さん私は今の仕事は出雲でなければならないと感じています。なぜなら先祖が徳島から来ましたが、それから長年の間、出会いとご縁を頂いている場所だからです。この出雲の地に根付くことが大事だと感じています。
森山さん木地に関しては素材の宝庫です! 出雲は山も川も海も、自然があふれている地です。私たち職人は、モノをつくっているときが一番楽しいのです。趣味が仕事みたいな感覚ですかね。出雲の恵みから出来た「モノ」を皆さんに〝おすそわけ〟できたら、それが一番の幸せです。