和食で欠かせない調味料「醤油」。<br>各地で食文化が異なるように、「醤油」の味も違います。<br>今回はしまね産業振興財団 専門アドバイザー・農学博士の山崎幸一氏に、地元の料理を食べながら出雲の醤油を語っていただきました。和食バンザイ!出雲醤油を味わう

和食で欠かせない調味料「醤油」。
各地で食文化が異なるように、「醤油」の味も違います。
今回はしまね産業振興財団の山崎幸一さん(農学博士)に、地元の料理を食べながら出雲の醤油を語っていただきました。

左から

《参加者》

  • 野井 かおりさん【東京からUターン】
  • 村岡 大吾郎さん【大豆栽培・未来サポートさだ】
  • 山崎 幸一さん【しまね産業振興財団 専門アドバイザー・農学博士】
  • 吾郷 希恵さん【mother食堂経営】
  • 原 健人さん【ぶどう農家】

吾郷さんおいしそうな料理がたくさん並んでますね!

おいしそうな料理

かおりさんこれらの料理は全て醤油の味付けですか?

大五郎さんそうみたいですよ!

山崎さんあ!赤貝がある。
出雲地方では昔から赤貝を煮て食べる風習があり、特におせち料理では定番。
これは濃口醤油で味付けするんですよ。

赤貝全国的には「サルボウ貝」と呼ばれる「赤貝」の煮付け。出雲地方のおせち料理には欠かせない一品。

健人さん濃口醤油…。醤油ってどれだけの種類があるんですか?

山崎さん醤油には5種類(※)あります。濃口醤油、淡口醤油、溜醤油、再仕込醤油、白醤油です。そして、島根県では、再仕込醤油が甘露醤油や刺身醤油として多く使われています。
※農林水産大臣が制定したJAS規格での分類

かおりさんえ???刺身醤油って再仕込醤油のことなんですか?

山崎さん再仕込醤油を刺身につけて食べることが多いので、刺身醤油とも言っています。再仕込醤油はとても贅沢なんですよ。できた醤油にもう一度、麹を加えて醤油を作る、要するに2回醤油を作るから濃厚になります。

山崎さん

かおりさんなるほどーーー。

山崎さん再仕込醤油は山口県柳井市が発祥の地です。島根県や山口県、九州地方で多く消費されていますが、近年は関東でも多く使われるようになっています。

かおりさん私は以前、東京で暮らしていたのですが、東京の醤油はサラッとしていて物足りなかったです。醤油シックというか…、なので出雲の醤油を持って行っていました。

山崎さんそうですね。東京はあっさりした醤油が多く使われています。

大五郎さん話の途中ですが……。この刺身は、再仕込醤油で食べていいですよね!?

山崎さんいいですよ(笑)。
出雲は日本海に面しているので、いつも新鮮な刺身が食べられます。新鮮な刺身は身が引き締まっているのでコリコリしていて旨味が少し足りません。なので味が濃い醤油が合うのです。

大五郎さん

大五郎さんうん、刺身に合いますね~!(食べながら)

山崎さん一方、少し時間が経った刺身はうまみ成分が出ているので、刺身そのものに味があります。そのため、あっさりした醤油が好まれたと言われています。

吾郷さんへ~~、面白いですね。

健人さん私は生まれが福岡県なんですが、福岡ではもっと甘い醤油ですよ。今は出雲の醤油に慣れましたけど。

健人さん

山崎さん九州は独特の食文化がありますね。味噌は麦味噌ですし、全体的に甘いものが好まれる傾向があります。西からたどっていくと、島根県までが再仕込醤油がよく使われる地域です。醤油は各地域の食文化をよく表しています。

健人さん島根までなんですねー。

山崎さん出雲は甘いものを好む傾向があります。いろんな説があるけれど、私は「お茶文化」の影響だと考えています。出雲地方で、おちゃをのむことを「たばこ」と言いますが、10時と15時、作業の合間にお茶を飲みます。お茶口にお菓子と一緒に漬物が出たり、煮しめが出たりします。お茶口にはやはり甘さ濃さが求められるため、嗜好性につながったのではないかと思っています。

吾郷さん煮しめは濃口醤油が多いですよね。

山崎さん出雲では、刺身醤油、濃口醤油、淡口醤油を使い分けている家庭が多いですよ。石見など、ほかの地域では、濃口醤油だけ台所にある家庭が多いと聞きます。

かおりさんどう使い分けるんですか?

山崎さん例えば、さっき言われたとおり、煮しめは濃口。淡口は色は淡いけれど塩分濃度が高いです。逆に塩分が低いのは再仕込醤油。雑煮は基本的に濃口で味付けするところが多いですが、色を重視して淡口でつくる人もいます。

吾郷さん和食は醤油、塩、砂糖が調味料の基本ですから!

山崎さん

大五郎さん熟成した醤油が世界中に広まりましたよね。醤油が意外と肉に合いますよ!

吾郷さん英語で言うと「ソイソース」!!

山崎さん現在、醤油は世界の調味料となっていますが、肉に醤油をかけて焼いたときの、醤油の焦げたフレーバーが欧米人にあったということで「照り焼き」として普及したようです。

大五郎さんあ~~~。なるほど!

山崎さん

健人さん実は大社町の鷺浦で塩づくりをした経験があります。それ以前は塩も醤油もどこでも同じだと思っていました。自分でつくったものはなおさらですが、じっくり手間をかけてつくったものは美味しい!!それから調味料の大事さに気がつき、醤油も蔵へ行きお気に入りを買っています。

吾郷さんどこの醤油を買っているんですか?

健人さん今は平田町の木綿街道にある醤油屋さんです。以前は、蔵の醤油は高いと思っていましたが、つくり手の顔や手間が分かると買おうと思うし、応援したくなります!

大五郎さん確かに、つくり手の顔が見えると違いますよね。スーパーの商品はつくり手の顔が見えないから、安い方へ手が伸びるのだと…。

山崎さん

山崎さん昔は「つくっていただいて、ありがとうございます」という時代でした。醤油の宅配があったり、つくっている人の家へ一升瓶を抱えて買いに行ったり…。

かおりさん昔は家で醤油をつくっていたんですか?

山崎さん手前醤油ならぬ、手前味噌って言葉がありますよね! 家でつくっていた名残です。

吾郷さん皆さん~、お餅をもってきました。焼きますので砂糖醤油で食べてください!

かおりさんお餅大好きーーー!やっぱり砂糖醤油ですよね!

山崎さん

山崎さん

山崎さん

醤油の話で盛り上がりつつ…、目の前にある料理に舌鼓を打つ参加者たち。
うんちくも大事ですが、結局は料理を美味しく、
楽しく食べることが一番なのでありました。
おしまい

醤油