出雲国風土記に記された
古代出雲の薬草文化を守り伝えていく

すだ ひとみ

須田 ひとみ

(古代出雲薬草探究会代表)

滋賀県生まれ。マクロビオティックをはじめとした食の仕事に携わりながら、巨石カメラマンであるご主人と国内外を巡る。2013年に大社町に移住し、「ベジカフェまないな」をオープン。出雲の野草について調べていたところ、古代出雲の薬草の文化にたどり着く。2015年には古代出雲薬草探究会を立ち上げ、ワークショップやイベントなど積極的な活動を行っている。

世界一周旅行で学んだ諸外国の菜食文化

出身は滋賀県です。調理師学校を出て20代の頃はイタリア料理店に勤めていましたが、体調に変化があってアレルギーで豚肉が急に食べられなくなったんです。それをきっかけに玄米菜食を基本とするマクロビオティックの方へ転身しました。

それからはマクロビ料理の教室やケータリングの仕事で各地を転々としまして、岡山に滞在していた時に主人と出会いました。主人(須田 郡司)は巨石を専門に撮っているカメラマンで、世界の巨石を撮るため、2人で世界40カ国を1年かけて回りました。

各国で主人が巨石文化を巡っている間、私はその国のベジタリアンやヴィーガンのレストランを取材しに回りました。国によってそれぞれに特色がありましたが、当時そういった食文化は日本より外国の方が進んでいたこともあり、いろいろと勉強になりました。

日本に帰国したのは2010年。関東に住居を構えましたが、1年経たないうちに東日本大震災が起きました。それをきっかけに移住を考えるようになり、ひとまず故郷である滋賀県に戻ったんです。

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出雲大社のお膝元で、古民家のベジタリアンカフェをオープン

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最初に出雲に訪れたのは出雲大社「平成の大遷宮」の年の2013年のこと。主人や仲間たちと一緒に出雲大社にお参りに行きました。5月の季節のいい頃で、島根半島をドライブしていたら景色がすごくきれいで、日本海でこんなにキレイなところがあるのかとびっくりしたのを覚えています。それで出雲の旅の後になんとなく島根の物件を探していたところ、たまたま今の物件をネットで見つけました。もともと観光地からちょっと離れたところで古民家カフェをしたいなというビジョンがあったので、「出雲大社から少し離れた築100年くらいの古民家」という条件がピッタリ当てはまって。再び出雲を訪れてすぐに移住を決めました(笑)外国の聖地の近くにはだいたいベジタリアンのカフェなどがありましたが、出雲大社という聖地の近くにはその頃一軒もなかったこともあり、ここでベジタリアンカフェを開こうと思ったんです。

「ベジカフェまないな」をオープンしたのは2014年4月。動物性添加物は使わず、地元の食材を使用したマクロビ料理を提供していました。マクロビオティックの思想には「身土不二(=土と身は切り離せない、その土地の作物を食べることが健康に良いという考え方)」というのがありますが、私は昔から野草やハーブに興味があって、以前から野草料理の勉強もしていました。出雲の地でも引き続き学びたいと思い、地元の方々に野草の勉強会などがないか聞いて回っていたところ、出雲国風土記には薬草について多くの記載があり、薬草や医療に関する神話も多く残っていることが分かりました。古くから薬草の文化が深く根付いていた土地だったというわけです。

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「出雲国風土記」で知った古代出雲の薬草文化

風土記の内容を紐解いていくと、色々なことが分かりました。例えば日本三大薬草と呼ばれる「ドクダミ・ゲンノショウコ・センブリ」といった一般的によく知られた薬草の名前はないのに、毒草である「トリカブト」の名前が記載されています。すなわち700年代にはポピュラーな薬草はもとより、毒草を医薬品として使うような高度な技術を既に持っていたということです。国内に残る風土記を見ても、これほど薬草のことが書かれている風土記は他になく、出雲国風土記の特徴の一つとも言えます。

そのような素晴らしい歴史がありながら、それらを引き継ぐ伝承文化がないのはもったいないと、2015年に「古代出雲薬草探究会」を立ち上げました。そして興味を持ったメンバーを中心にして「古代出雲」や「薬草」をキーワードにさまざまな活動をはじめました。具体的には年3〜4回のワークショップの開催です。専門家の方を講師に招き、出雲とゆかりのある薬草を取り上げて、勉強会や料理、染織の体験などを行いました。私にとっても未知の世界でしたが勉強するうちに知識もついてきて、いつしか講師として招かれるようになり、出雲の荒神谷博物館や広島市の植物公園で講座を開くこともありました。いつの間にか出雲の文化を発信する側になっていましたね(笑)全国的に野草やハーブの専門家はたくさんいますが、歴史的にフォーカスしている人は珍しかったんだと思います。

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食や薬草を通じて出雲で健康に

今の時代、コロナ禍もあって健康に興味がある人が増えていると思います。新型コロナウイルスや病気にかからないために免疫力を上げるということも注目されていますし、そういった面でも薬草やマクロビオティック、メニューの提案といった依頼も多いです。私自身、玄米菜食を取り入れることで食養生というか、アレルギーが治るなど体質が改善されました。そうはいってもずっと菜食である必要もないと思いますし、お肉で元気になる人もいるし、要はバランスが大事だなと思います。食事だけじゃなくて、運動もやっぱり大切ですしね。

今後の目標としては食を通してたくさんの方に健康になってもらいたいということ、そして古代出雲の薬草文化を繋いでいきたいですね。マクロビオティックも薬草も、考え方としてはやはり健康がベースにあるので、今後もそういったワークショップやイベントを中心に、いろんな活動をしていきたいと思っています。

現在ベジカフェは営業しておりませんが、「まないな」の店内にある古代出雲薬草展示室は神門通りの「EBINOYA」2階のカフェTHE GIFT内に移転し、「まないな」では薬草とヨガを取り入れたイベントなども開いています。あと出雲に来て健康になってもらうっていう「出雲リトリート計画」も密かに進めているんですよ(笑)

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出雲人が薦める出雲

マリンタラソ出雲から見る夕景
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市内にある「マリンタラソ出雲」の海水プールにはいろんなアトラクションがあって、リフレッシュのためによく行きます。外には屋外ジャクジーがあり、夕暮れ時にそこから眺める夕景は最高です!

命主社
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まないなの真名井地区の氏神様
命主の社の前に、推定樹齢1000年といわれるムク(椋)の巨木があり、実を食べるとお腹の調子が良くなるよと町内の方に教えていただきました。社の裏側の荒神は全国で唯一、マコモの葉を使用している蛇巻きです。このマコモの葉を奉納させていただいています。

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