来場者1万人超! 出雲産業フェアが大変興味深かった件 / 改めて知る「産業」の奥深さ
「産業」と聞くと、日常からは縁の遠い話だと感じてしまう。いわゆるIT系企業ではたらく私は、まったく接点のない物事のように感じるのだが、実はそうではない。私たちの生活と密接に関係しているのだということを、出雲ドームで開催されたイベント「出雲産業フェア」で学ぶことができたので紹介したいと思う。
このイベントは、2016年11月5・6日の2日間にわたって開催された。出雲市を中心に島根県の企業・団体が参加して、製品や技術を広く発信するために開かれた一大イベントだ。2日間の来場者数は1万人を超えるというから、かなり規模が大きい。
さて、このイベントの目玉は、「全日本製造業コマ大戦」である。簡単にいうとコマ相撲だ。対戦者とコマ回しをして、相手を倒すか土俵の外に押し出すというもの。コマ? だいの大人がコマ回しをして何か意味あるの? と思われるかもしれない。実際私も、子どもの遊びじゃないかとばっかり思っていた。
しかし、そうではない! コレには非常に大きな意味があり、企業の威信がかかっている。
と言うのも、コマを安定して回すためには、高い技術が求められるからだ。企業が技術の粋を集めて造り上げたコマで、他の企業に勝つということはつまり、高い技術力を持っていることの証だ。だから、「全日本」なのである。この大会で優勝するということは、日本一技術が高いといっても過言ではないだろう。今回はその西日本ブロック予選という訳だ。
コマを回す担当者たちの顔つきは真剣そのもの。遊びなんかじゃない! 企業のプライドをかけて、企業の技術力をかけて、コマに魂を込めて回している! アツい! アツすぎる!! 甲子園の高校球児並みにアツい!
すべての企業に勝って欲しいけど、そういう訳にはいかない。1組の勝者を決めるまで、戦いは続いていく。
そうして切磋琢磨することによって、日本の技術力が向上していくのだと思うと、やはり意義深い大会なのだなと改めて感じることができた。やはり遊びではない。
そうしたアツい戦いがある一方で、イベント会場には、美味しいお店も多数出店している。もちろん地元の特産品を生かした美味しいお店だ。
数あるお店のなかで、私が選んだのは、うなぎの名店として知られる「ひがしや」のうな玉丼。うなぎを玉子で閉じた一品である。
コマ大戦の観戦に興奮して、ムショーに腹が減った。やっぱ手に汗握る戦いを見ると、お腹が空くものだ。ふっくらとしたうなぎと玉子のマリアージュは、この空腹を満たしてくれるに違いない。実際に食べてみると……。
ウッヒョー! ウマい。ウマすぎる!! 五臓六腑にしみわたるとはこのことだ。香ばしいタレとうなぎ・玉子の甘さが絶妙にマッチしている。普段は味わうことのできないグルメに出会えるのも、産業フェアの醍醐味なのかも。
産業フェアは、子どもにとっても貴重な体験の場だ。というのも、いろいろな技術体験・職業体験を提供しているのである。たとえば、先ほどのコマ大戦に関して、3Dプリンターで作ったパーツを組み合わせてオリジナルコマを作る場を提供している。
そして、和菓子職人と一緒につくる和菓子つくり体験。
プログラミングでサッカーロボットを動かす体験コーナーや。
バスや航空機を疑似的に運転する体験コーナーまである。
これらの体験を通して、子どもたちが仕事や技術に関心を持つきっかけになるだろう。もしかしたら、この体験から将来を展望する子もいるかもしれない。産業フェアは職能を目覚めさせる場にもなっているのではないだろうか。
そのほかの出展ブースでは、地元の特産品の展示販売も行われていた。地元であるがゆえに忘れている、魅力的な商品を知るのに、良い機会となっている。
最後に紹介したいのが、技術展示だ。冒頭にお伝えしたように「産業」というと、日常生活と縁のないもののように思う。しかし産業における技術の進化が、確実に私たちの生活を豊かにしてくれる。たとえば、最先端のロボットアーム。
この製品は、商品の色を識別して分別作業を行う。製造業で活用されるだけでなく、将来的には介護現場でも用いられる技術のひとつではないだろうか。また将来的に、家庭用ロボットが普及した際に、この滑らかな動きをするロボットアームの技術が、我々の日常をサポートすることになるだろう。
機械技術だけでなく、農業技術も生活を豊かにしてくれる。「ガーデンシュレッダー」と呼ばれる庭木などを粉砕する機械を使えば、ゴミを極限まで減らすことができるかもしれない。
「ミミズコンポスト」で粉砕した葉や枝、生ゴミなどをたい肥に変えれば、ゴミゼロも夢ではないだろう。こうした技術の進化が、私たちの生活を支えると共に、少しずつ豊かさをもたらしてくれる。
今回の出雲産業フェアを通して、産業は決して日常と無縁ではないと気づかされた。私たちの生活は、小さな仕事を積み重ねていった「産業」という大きな器で守られているのである。
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