月読神社にお参りに行こうと思ったら「想像を超える大冒険」をする羽目になったでござる!
三重県の伊勢神宮は全国的に良く知られている。その「お伊勢さん」と対をなす神社は、どこかご存じだろうか? 伊勢神宮の「日出づるの宮」に対して、その神社は「日沈みの宮」と言われている。その神社とは、日御碕神社である。主祭神は伊勢と同じく天照(アマテラス)大神、そして素戔嗚(スサノオ)尊である。
さて、三柱神と呼ばれる言葉があるように、アマテラスとスサノオにはもうひとり兄弟神がいる。それが月読(ツクヨミ)命だ。日御碕神社のすぐ近くに月読神社もあるらしい。ということで、早速お参りに行こうとしたところ、思わぬ大冒険になってしまった!
・日御碕神社のすぐ近く
日御碕神社を訪ねたことがある人は多いと思う。地元でも有名な観光スポットであり、日御碕灯台とセットで観光するのが、ひとつのパターンである。「お参りして灯台行こう」か「灯台の帰りにお参りするか」、そんな流れになる。
では。月読神社に訪ねたことがある人はいるだろうか? 「名前は聞いたことがある」、「よく考えたら見たことない」、そんな人がほとんどかも。訪ねてみてわかったのだが、月読神社に辿りつくには、ちょっとした覚悟がいる……。その理由をお伝えしよう。
スマホアプリの「GoogleMap」を見ると、日御碕神社と月読神社は約500メートルしか離れていない。近いじゃん! 車なら5分で着く。そう思って向かったのだが……。
どこ!? 入り口はどこなの? 「月読神社はこちら!」とかないの? 散々探したのだが、それらしきものは一向に見つからない。もしかして、Mapが間違ってたのかな。そう思いながら、車で行ったり来たりしていると……。
もしかして、アレかな? あの小さく何か書いてあるヤツ。
推定50センチの小さな石柱を発見。こんなの車で走ってて見つかるかよ……。この前を何回素通りしたことか……。
・400mならすぐ着くでしょ?
「月読神社 400m」、この石段の先に立派な神社があるんだろう。早速行ってみるか! 期待に胸を膨らませて歩き出したのだが……。
あっという間に石段は途絶えた。アレ? 入り場所を間違えたのかな。
ネットが貼ってあるけど、ここ私有地じゃないよね? 歩き始めて5分で猛烈な不安に見舞われてしまった。大丈夫か?
「月読神社 300m」、間違ってはないみたい。でも、先に見えるのは、『道』ではないよね……。それでも信じて、前に進むとさらに森は深くなる。
ちょっと引き返したい気分になってきた。時間は16時頃。もしも1時間彷徨ったら、日が沈むだろう。そうすると、下山できなくなったりしないだろうか。神社を訪ねて遭難したら、シャレにならん……。まだ半分も進んでないのなら、今なら引き返せるよね。
・着いた?
ビクビクしながら進んでいたら、何か見えてきた! よかった~、無事に辿りついた。危うく、ゴール目前で引き返すところだったよ。それにしても、こじんまりとした神社だなあ。
日御碕神社と比べると、ちょっと寂しい。もう少し立派なものを造ってあげても良さそうなものなのに。三柱神なんだからさあ……。
とりあえず、お参りできたので帰ろうと振り返ると!!!!
鳥居!? なんで? 鳥居は神社の入り口を示すもの。ということは、この先に神社があるってこと!? 良く見ると、その脇に……。
「月読神社 180m」、ナニーーーーッ! ここじゃなかったーーー。この先まだ180メートルも登山が続くッ! マジかよ、到着したとばっかり思ってたのに。行くしかないだろ。ここまで来たんだから。ということで、登山続行!
(※実はここは推恵神社であることを後に知ることとなる)
・完全に登山
ここまででも十分に「道」と言えなかった。せいぜい「ケモノ道」くらいの悪路だったのだが、目指す先はすでにケモノ道でさえもなくなっている。「山」だ。完全に山でしかない……。途中にタヌキだかイノシシだかわからない動物の、ホカホカの糞が落ちていた。神社にお参りに来て、正体不明の動物の糞に遭遇したのは、初めての経験だ。
・ナゾ多き神様「ツクヨミ」
それにしても、山を分け入りながら思う。月読神社を訪ねたことがない人が多いのは、このようにアクセスが悪いからだ。看板もなく、参道はまったく整備されていない。この急こう配な山の斜面を分け入ってお参りしようと思う人は、ほとんどいないだろう。女性なら特に、ヒールやパンプスでこの山を登るのは難しい。子どもやお年寄りも難しいはず。なぜ、このままにしておくのだろうか?
「ツクヨミ」という神様に、何か所以(ゆえん)があるのかもしれない。ツクヨミはアマテラスとスサノオの兄弟でありながら、ナゾに包まれた神様なのだとか。月を神格化したとか、夜を統べる神と言われているのだが、その解釈には諸説ある。しかしこの神社のあり方を見ると、「ひっそりと夜を護る」ようにも感じられる。
険しい山道を登ること約20分、ようやく終わりが見えた。
ここだろ。今度は間違いない。
推恵神社よりもさらに小さく社というよりも祠。しかしそこには確かに月読神社とあり、
月夜見尊(ツクヨミ)と高皇産霊尊(タカミムスビ)の名が記されている。山の頂から、日御碕神社と日本海を臨み、夜を護っているのだろう。実はこの山の中腹には、日御碕神社の宮司家の御陵がある。この神社はお世辞にも立派とはいえない。むしろみすぼらしくも思えるのだが、宮司家の御陵や推恵神社、日御碕神社までもがツクヨミの見守る先におさめられ入るということではないだろうか?
アクセスが悪くても、山の頂にあってこそ、月読神社は意味があるのかもしれない。
帰る時に車を止めた場所まで戻った時、色あせた車止めの白い杭が目に留まった。そこに書かれている文字が、何となく自分に向けられた言葉のように感じた。
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